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雲は遠くて
19章 信也と 詩織の ラブ・ストーリー (2)
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(ま)にあっていたのだけど、
詩織が、そういうものだから、
きょう、スマホに()えた。

「しんちゃんって、すごい、素直(すなお)!」

そういって、そのとき、詩織はほほえんだ。

「はははっ。詩織ちゃんに対しては、
素直になっちゃうのかな?おれって!」

信也は、()れて、わらった。

詩織が、1994年6月3日生まれ、19(さい)
信也が、1990年2月23日生まれで、23歳。

詩織は、3年と、4か月ほどの、年下なのだけど、
おしゃべりが大好きで、明るいから、友だちも多い、
詩織は、信也の心を、()ちつかせる。

詩織は、おしゃべりが好きだけど、
グレイス・ガールズのリーダーの、
清原美樹についての話は、
あえて(さぐ)るような、
(いや)みになるような、
信也に、不快な思いを与えるようなことは、
まったく、話題にしない。

詩織は、おれの心の傷に、()れないように、
してくれているんだな・・・。
そんな詩織の(やさ)しさに、また、
(いと)おしさを感じる、信也だった。

シャワーを浴びて、バスタオル1枚だけの、
まだ、しっとりと、()れて、
ピチピチと、(はず)むような、
詩織のからだを、
信也は、そっと、抱きしめる。

しっとりと、まだ()れている、
つややかな(かみ)(はだ)からは、
レモンの、心地(ここち)よい、(かお)りがした。

「しんちゃん、シャワーは?」

「じゃあ、おれもシャワーしてくる。そのあいだに、
詩織ちゃん、帰っちゃったりして」

「そんな(はなし)、どこかで、聞いたことある!」

あっはっはと、声をたてて、ふたりはわらった。

詩織は、その夜、はじめて、信也に(だか)かれた。

詩織にとっては、信也が、初めての相手であった。

信也は、酔っているのに、ベッドの上では、
終始(しゅうし)、気をくばって、
詩織には、ていねいで、やさしい。

信也には、詩織にとっては、
これが、初めの経験とわかっているらしい。

照明(しょうめい)(くら)くした部屋(へや)には、
詩織(しおり)が見つけた、マライヤ・キャリーのCDの、
マイ・オール(My All)のリピートが、
小さな音量で、()がれ、つづける。

今宵(こよい)は、あなたの愛と引き(ひきか)えに、
すべてを()てる

あなたの(あい)と引き換えに
すべてを()てるわ

そんな歌詞のバラードの名曲であった。

≪つづく≫ 

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