その20
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筈のナルトは、呆気なくあっさりとサスケに辿り着き、ぽふり、と軽い感触でサスケの胸に抱きついてきた。
そして、サスケの胸に顔を押し付けたまま、ずるずるとずり下がり、サスケの腰にしがみつく。
その上、サスケの股座に顔を埋めるようにうつ伏せになったまま、微動だにしなくなる。
どうやらそこでサスケを枕に寝ようという魂胆らしい。
「おい!」
溜まりかねて声を上げれば、いやいやをするようにサスケの股座に顔を擦り付け始めた。
微妙な場所での微妙な行動にサスケは焦り、混乱する。
「どこに顔埋めてんだ、てめぇは!変態か!離せ!!」
しっかりと寝間着の腰の部分を握り締められ、がっちりと掴まれていて、振り解けない。
足で蹴り飛ばそうにも、ナルトの重みでそれもなかなかに難しい。
何より厄介な事に、余り乱暴過ぎる手にでるのは、少々気が咎める相手になってしまったのだ、ナルトは。
目覚めた瞬間は動揺の余りに咄嗟に蹴り飛ばしてしまったが、同じ事を意識して繰り返すのは気が咎める。
こんな事なら知りたくも無かった、と。
サスケは情け無い気持ちを噛み締めながら天を仰いだ。
そもそも、サスケは、ナルトの事情を知りたくて知ってしまった訳じゃない。
ただ、ナルトの側の人間がうっかり口を滑らしたのを聞いてしまっただけだ。
そうして、ナルトの事情のあれこれを聞かされ、ナルトの監視を押し付けられたも同然だ。
まあ、見返りは将来的にきっちり取りたてるつもりでいる。
なにせ、取り引き相手は木の葉の三忍だ。
元は取れるに違いない。
それはともかく。
サスケに抱き付き、サスケの膝の上で眠る、健やかで安心しきったナルトの穏やかな寝息が辺りに響く。
その温かさと平穏さに、サスケの気も落ち着いていく。
サスケを枕にしようという図太さだけは許し難いが、でもまあ、今だけなら甘んじてやっても良いか、と、そんな風に絆される。
そうして、苛立ちと情けなさと、サスケにも整理しきれない複雑な感情がごちゃ混ぜになり、深い溜め息を吐いた。
そうして、ふと、思い出す。
今は厳重に封じられ、容易く足を踏み入れられなくなってしまった、サスケの家。
そこに通って来ていた猫も、時折こんな風にサスケの膝の上で丸くなっていた。
重さも大きさも大分違うが、温かさだけは、ナルトも同じだ。
デカ過ぎるが猫と思えば、この状態のナルトを許容出来なくもない。
「って、出来る訳無いだろう!!」
容易く絆されかけた思考になっていた事に気付き、思わず口にだす。
「良いから起きろ!オレはお前の枕じゃねー!!!!」
渾身の力を込めて悲鳴混じりの抗議の声を上げれば、どたばたと家人が起き出す気配がした。
いつもの事とはいえ、いい加減にしてほしい。
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