アリシゼーション編
第一章?七武侠会議編
集う列候
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めてある。
木綿季は気にしないと言っていたが……若干不満そうにしているのが何となく分かる。
「あの、すみません。せっかくお2人で出掛けるところをお邪魔してしまって……」
「華苑院様には自分も頭が上がりませんから……気にしないで下さい」
華苑院の婆さんは彼女の後見人も務めているらしく、その手前、あまり強い事は言えないようだ。
「あの、水城殿。これから街に出る訳ですが、この言葉使いは少々勝手が悪いです。丁寧な言葉使いは無しで、私の事も友紀奈と呼んで下さい」
「……分かりました。自分の事はご自由に呼んで下さい。……木綿季、ご挨拶」
そうは言っても丁寧な言葉使いが抜けない自分に辟易しつつ、良い機会だと木綿季を紹介しようとする。木綿季はその物怖じしない性格を発揮し、誰よりも早く忠実にその取り決めを実行した。
「ボクは紺野木綿季って言います。木綿季で良いよ!よろしくね、友紀奈!」
「は、はい!よろしくお願いします、木綿季」
一応歳上ではあるので、せめてさん付けぐらいはして欲しかったが、表面上とは言えフランクな関係を望んだのは向こうだ。それに、このストレートさは木綿季のパーソナリティであり、硬い性格をしている友紀奈様や俺にとっては丁度良いのかもしれない。
「じゃあ、行こうか。木綿季、友紀奈」
「うん!」
「はい……!」
ーーーと言う一部始終を眺めていた華苑院は孫の門出を喜ぶ祖母の如く安心したような笑みを浮かべた。
「……婆さん、螢をゆきちゃんの『剣と盾』にする気か?」
「出来ればそうしたいところだがのぉ……坊め、既に伴侶がおったか」
「全くだよ。最近の若者は早熟でついて行けないね」
隣に立つのは水城悠斗。華苑院は彼を見て、少し顔をしかめた。彼が片手に持っていたのは酒。中はもう既に半分ほど減っている。
「仮にも英国貴族が昼間から随分と下品な飲み方してるじゃないか。どうかしたかい?」
「いーや、少し気になるネタが入って来てね。どうしようかなぁ、と考えている内につい……」
「気になるとは?」
「俗世の事だよ。貴女は興味無いだろう?」
「まあの」
しかし、あの水城悠斗が『気になる事』なのだ。少しは関心を持ってしまう事があってもおかしくはない。
そしてまたぶらぶらとその場から歩いて去って行く悠斗の背を見つつ、彼女は瞑目した。
遠き昔、彼女がまだ少女だった頃。気が狂うかと思うほど嗅いだ、懐かしくも忌まわしき匂い。
火薬と金属。腐りかけの肉と乾いた血。その匂いがふと鼻を擽った気がした。
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