僕と家出と心変わり その2
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摘されてようやく気が付く。少し深く考え過ぎだった。あんなのすぐに答えが出るわけでもないのに……。
相手は――母さんか。音声着信を確認して、僕は携帯電話を耳へ当てた。
『もしもし? 明久? 貴方、玲と何かあったの?』
女性としては少し低い、落ち着いたトーン。年齢に迷彩がかかっているような、そんな印象。この声色は僕の母親のものだ。
「うん。あったよ、色々と」
母さんに隠し事は通用しないので、素直に白状しておく。母さんは職業柄、人と対面で話す機会が多い。僕の底の浅い嘘なんて一瞬で看破されてしまうだろう。
『何があったのか、教えて頂戴』
「分かったよ。全部話す」
僕は今日起こった口論の顛末を全て母さんに話した。僕が語っている間、母さんは一度も口を挟まず最後まで聞いてくれた。僕が全て話し終えると、母さんは一つ溜め息を溢し呟いた。
『抑止力があると思って玲を送ったのだけど……どうやら逆効果だったようね』
「姉さんのおかげで食生活は改善されたし、得意科目だって出来たけどね」
『そうね。まあ、玲の件は措いておくとして……。明久の意見は分かったわ』
ちゃんと姉さんと僕の意見二つを汲み取ってくれるようだ。この辺り、母さんは公平な目線で今回の出来事を見つめているのが伝わってくる。
『明久。柊木の二階に一室空いている、と言っていたわね』
「うん」
『速めに不動産会社とコンタクトを執りなさい』
「それって……」
『ええ。貴方の一人暮らしを認めてあげるわ。成績も少しは向上したようだし、頃合いね』
「やった♪」
思わずガッツポーズ。
夏休み前に一学期の成績を両親に送ったんだけど、やっぱり効果があったみたいだ。日本史と世界史の成績がCクラス中堅レベルまで上がっていたことを、評価してもらえたのだろう。
『手続きが一通り終わるまで、貴方は康太君の家の居候よ。努めて失礼のないように。今度、父さんとお礼に伺うわ。康太君に言付けておいて』
「うん。了解」
通話を終えて、携帯電話をズボンのポケットにしまう。僕が母さんと長電話をしている間、康太はキッチンを忙しなく駆け回っていた。料理が出来上がると、テーブルの上に二つの丼物を並べる。冷えたお茶やお箸が既に用意されていた。手際がいいなぁ。
「………今日は冷やし中華。早く食べよう」
「そうだね。温くなっちゃうと勿体ないし」
康太の対面に座って箸を取った。具材は千切りのキュウリ、薄焼き玉子、チャーシュー、もやし、トマト、紅生姜を少々。香りや彩りが良く、食欲が勢いを増す。すごく美味しそうだ。
いただきますを言うのももどかしく、せっせと箸を動かす。コシのある中華麺にあっさりとしたスープが良く絡む。美味い!
「康太。美味しいよ」
「………ありがとう」
自分の作った料理を褒められて、満更
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