アカデミー編
赤い鞘
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のかを。
それでも彼女は、知らないふりをしている
目をそらして、耳を塞いで、うずくまって。
何も見なくて済むように、何も聞かなくて済むように、何も知らなくて済むように。何もかも捨ててしまえるように、何もかも忘れられるように。
彼女はあの日に壊れて以来、壊れたままで治らなくなってしまった。
――うずまきカトナはいつだって、目をそらしている。
・・・
ばっと突然跳ね起きたカトナは、枕元に置いていた短刀を手に取った。
周囲を見回し、全身に力を入れて警戒する。
真っ暗な世界。誰もいない、人影も見えない。
ただ、カトナの荒い息だけが部屋の中に木霊する。
「…だれも、いない?」
カトナはずるずると足を引きずるようにして移動すると、隣の障子を開ける。
しばらくの間の後、カトナの荒い息の隙間を縫うように、すーすーと穏やかな寝息が立てられているのを確認する。
カトナはほっと息を吐いた。
ナルトは大丈夫。
暗闇の中でも鮮やかに見える金髪を目にして安心した後、ふらりと、千鳥足の様な足取りでカトナは歩き出す。
と、今度は違う障子を横に動かし、縁側に立つ。
空は綺麗な月が輝いていた。満月だ。
うっすらと雲がかかっているので、その輪郭はぼやけている。
けれども、カトナの目にはそれさえも眩しく見えた。
月は、好きだ。
この場にナルトがいないことを残念に思いながらも、カトナはふらふらと何かに導かれるように縁側に飛び降りた。
うちは家の庭はよく整えられている。
昔はサスケの母が整えていたのだが、今はサスケ自身が整えている。最近、サスケがここにプチトマトの種を植えていたことを思い出して、カトナは微笑んだ。
ナルトもああ見えて植物に水をやることが好きなので、この庭にはたくさんの花が咲いている。
自分が植えた花がどこにあるのか探そうとしたカトナの目は、しかし彼女の意思に反して、地面ではなく空に向いていく。
それに、彼女は違和感を覚えない。
彼女は吸い寄せられるように月を見て、ああと目を伏せた。
月は、好きだ。
だって月は、ナルトや父と同じ色をしている。
ナルトは月であって太陽だと、カトナはそう思っている。
一つの、それだけで完成されているそんな存在。
その言葉では、自分はいらないのだと認めているようなものなのに、カトナはあえてその言葉を使う。
自分がやっていることは、何の見返りもない。ただのおせっかいなのだと、自分自身にそう突きつける。
ナルトに助けはいる。
でも、それは今ではない。
自分がやっている行為は単なるおせっかい。ナルトの為になったとしても、ナルトが何を返してくれることはない。
ハイリスク、ロー
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