魔神
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言う。
「どーする?サクッと殺しておく?」
「マスターは殺害の有無は自分で決めていいと言っていたが」
「じゃあグサッと一突きいきましょう!ボクに任せて!」
その会話を聞いたアランは歯を噛みしめた。
握りしめた拳が震える。
涙が零れそうなのを必死に堪え、俯く。
(約束したのに…絶対助けるって、言ったのに……!)
無力だった。
今のアランは、ただ無力なだけ。
“あの魔法”がないから、ではなく、ただ魔導士としての実力の問題。
相手が強くて自分が弱かったという、単純な事。
「さーてっ!いっくよー!」
無邪気なジェメリィの声。
昔と変わってないな、とどこかで思いつつ、アランは目を閉じる。
今の自分には拳を握りしめる力も残っていない。
ジェメリィの次の一撃を避ける気力もない。
――――――ここが、本当の意味での終わり。
(皆さん……ごめんなさい。僕は……もう…)
最後に、ギルドのメンバーにありったけの謝罪を。
中で戦っているナツ達に対して。
外で戦っているスバル達に対して。
そして―――――アランにティアの事を託した、ウェンディとココロに対して。
(……さよなら)
誰にも届かないと知っていながら、呟く。
闘志も意識も何もかもを手放そうとした―――――――刹那。
――――――聞こえてる!――――――
「!」
声が、聞こえた。
この声の主をアランは知っている。
(ナツさん……?)
それを思い出すと同時に、この言葉を彼が言った状況も思い出す。
確かあれは連合軍の一件の時。まだ最近の事と言えるのに、随分昔な気がする。
ニルヴァーナを止める方法を知り人数を集めていた時、皆の声に答えたナツの声。
直接見た訳ではないが魔力もほぼゼロで、ボロボロの傷だらけだったはずだ。
(そうだ…ボロボロで…今の僕以上に傷ついてたのに……ナツさん達は、立ってくれた……)
――――大丈夫!ギルドはやらせねえ。この礼をさせてくれ。必ず止めてやる!――――
そう言って。
力強く、そう約束してくれて。
本当に、守ってくれた。
アラン達の幻の家族を、守ってくれた。
(……これは、そのお礼だ)
傷つきながら戦ってくれたナツ達に対しての。
アラン達をギルドに導いてくれた彼等に対しての。
入ってまだ数週間のアラン達を“仲間”と呼んでくれる、皆に対しての。
(覚悟なんていらない)
ずっと使っていなかった“あの魔法”。
思い出すだけでも苦しくて、2度と使うまいと決めていた魔法。
だけど、あの魔法に少しでも希望があるのなら。
勝てるかもしれない―――
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