暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
魔神
[7/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
言う。

「どーする?サクッと殺しておく?」
「マスターは殺害の有無は自分で決めていいと言っていたが」
「じゃあグサッと一突きいきましょう!ボクに任せて!」

その会話を聞いたアランは歯を噛みしめた。
握りしめた拳が震える。
涙が零れそうなのを必死に堪え、俯く。

(約束したのに…絶対助けるって、言ったのに……!)

無力だった。
今のアランは、ただ無力なだけ。
“あの魔法”がないから、ではなく、ただ魔導士としての実力の問題。
相手が強くて自分が弱かったという、単純な事。

「さーてっ!いっくよー!」

無邪気なジェメリィの声。
昔と変わってないな、とどこかで思いつつ、アランは目を閉じる。
今の自分には拳を握りしめる力も残っていない。
ジェメリィの次の一撃を避ける気力もない。
――――――ここが、本当の意味での終わり。

(皆さん……ごめんなさい。僕は……もう…)

最後に、ギルドのメンバーにありったけの謝罪を。
中で戦っているナツ達に対して。
外で戦っているスバル達に対して。
そして―――――アランにティアの事を託した、ウェンディとココロに対して。

(……さよなら)

誰にも届かないと知っていながら、呟く。
闘志も意識も何もかもを手放そうとした―――――――刹那。








――――――聞こえてる!――――――







「!」

声が、聞こえた。
この声の主をアランは知っている。

(ナツさん……?)

それを思い出すと同時に、この言葉を彼が言った状況も思い出す。
確かあれは連合軍の一件の時。まだ最近の事と言えるのに、随分昔な気がする。
ニルヴァーナを止める方法を知り人数を集めていた時、皆の声に答えたナツの声。
直接見た訳ではないが魔力もほぼゼロで、ボロボロの傷だらけだったはずだ。

(そうだ…ボロボロで…今の僕以上に傷ついてたのに……ナツさん達は、立ってくれた……)






――――大丈夫!ギルドはやらせねえ。この礼をさせてくれ。必ず止めてやる!――――






そう言って。
力強く、そう約束してくれて。
本当に、守ってくれた。
アラン達の幻の家族を、守ってくれた。

(……これは、そのお礼だ)

傷つきながら戦ってくれたナツ達に対しての。
アラン達をギルドに導いてくれた彼等に対しての。
入ってまだ数週間のアラン達を“仲間”と呼んでくれる、皆に対しての。

(覚悟なんていらない)

ずっと使っていなかった“あの魔法”。
思い出すだけでも苦しくて、2度と使うまいと決めていた魔法。
だけど、あの魔法に少しでも希望があるのなら。
勝てるかもしれない―――
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ