魔神
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ように纏われ、足の炎も引き寄せられていく。
3つ全てが右拳に宿り、アランは叫んだ。
「煉獄撃覇!」
アランの魔法の中でも高威力を誇る一撃が、ジェメリィに放たれた。
周りの弾丸を吹き飛ばし、防御態勢を取れなかったジェメリィも吹き飛ぶ。
拳を前に突き出した状態で停止していたアランは右腕を下げ、大きく息を吐く。
くるりと振り返れば、薄く微笑むキャトルがいる。
「…次はあなたですか」
「いいや」
「は?」
アランの言葉に、キャトルは首を横に振る。
意味が解らず再度問うアランに、キャトルは言った。
嘲るような笑みを浮かべて。
そこに響く、声。
「ボクに勝ったと思わないでよ?こんな幻の中で!」
幻。
その言葉の意味を理解するのに、数秒かかった。
そしてその数秒のうちに、彼女は次の手を発動する。
「幻術弾丸、一斉攻撃!」
ふわり、と世界が崩れるのを、アランは見た。
目を見開いている間に何かが迫ってくるのを感じ、振り返る。
が――――アランがそれを目視するのは不可能だった。
「うああああああっ!」
目視するより、早く。
オレンジ色の無数の弾丸が、全方向からアランを攻撃した。
「……」
塔の1つ。
既に戦闘が終わっている塔のとあるフロアで、1人の青年が起き上がった。
数回瞬きを繰り返しある方向を向くと、立ち上がる。
「……行くか」
誰に言う訳でもなく呟き、ドアを開ける。
静かな部屋に、ドアが閉まる音だけが響いた。
「幻術使いのボクが、正々堂々戦うと思った?」
そう言って、“無傷の”ジェメリィは笑う。
全身に傷を負ったアランは俯せに倒れながら、顔だけを前に向けた。
「いつ…から……」
「最初からだ」
途切れ途切れの声が尋ねる内容を理解した“無傷の”キャトルが呟く。
アランの桃色の目が見開かれ、ジェメリィは意地悪そうな笑みを浮かべる。
キャトルは薄い笑みを湛えたまま、続けた。
「ジェメリィがこの塔にいる事には気づいていた。だから呼び、お前と戦う前に幻術をかけた。お前はあっさりと騙されたようだな」
くくっと笑うキャトル。
アランはキッと睨みつけるが、全身の怪我のせいで起き上がれない。
痛いほどに拳を握りしめる。
ジェメリィがそんなアランを見下ろし、口を開く。
「ま、キミももう動けそうにないし、ボク達の勝ちだよね?“あの魔法”も使えない今のキミじゃ……最初からボク達には勝てなかっただろうけどさ」
そう言って、キャトルに向き直る。
無邪気な声のまま、
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