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Element Magic Trinity
魔神
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ただそれだけなのに全身が強張る。
ぎこちない動きで2人の方に顔を向けると、キャトルは不思議そうな表情でジェメリィを見た。

「知り合いか?」
「まあね、一応同郷ってヤツ」

肩を竦め再度アランを見る。
灰色の髪も桃色の瞳も変わっていない。背は伸びているし顔つきも大人びてはいるが、雰囲気はジェメリィの知る当時と何も変わっていなかった。
優しくて柔らかくて暖かい、それでいて全てを遠ざけようとする雰囲気。
周りに誰かがいる事が怖くて仕方ない――――そう言っているかのような、怯えに似た感情が混ざっている。
対人恐怖症という訳ではなく、過去のトラウマを克服するチャンスを見出せず、ここまで引き摺ってきただけだという事を彼女は知っていた。

「で?キミはまだ昔に怯えてるんだ?」
「!」
「情けないなあ、ビクビクしちゃってさ。別にボクが何かした訳じゃないのに……でもまあ、キミは昔から誰かの後ろに隠れてる事しか出来ない臆病者だったもんね」

目を細め意地悪そうな笑みを浮かべるジェメリィの言葉に、アランは唇を噛みしめ俯く。
反論する隙もなかった。
グサグサと突き刺さってくるのではなく、チクチクと一撃は小さい。が、小さい攻撃が狙うのは1番弱い部分。アランが反論する事を封じるように、狙う。
だったらいっそ、関係ない事ごとグサグサ突き刺さってくれた方がマシだ、とアランは思った。

「何なら見せてあげよっか?完全に同じようには出来なくても、似た幻術なら見せてあげるよ?」
「結構、ですっ……!」

笑うジェメリィに絞り出すように返すと、アランは床を蹴った。
右拳に紫電を纏い、桃色の目でジェメリィを睨む。

「紫電…轟雷!」

顔面に叩き込む。
相手が女だから顔は狙いにくい、とか考えてる場合じゃなかった。
アランの拳はジェメリィの顔に直撃し―――――ふわりと、その姿が煙のように消える。

「!」
「ボクは幻術魔法(ミラージュマジック)の使い手だよ?自分の幻作るくらい……どうって事無いんだよね!」
「がっ!」

いつの間にか後ろに回っていたジェメリィの一撃が、ガラ空きのアランの背中に直撃する。
バランスを崩したアランは前に倒れ込みかけ、更にジェメリィはオレンジ色の剣を振りかざす。
気配でそれを感じたアランは横に転がって避け、起き上がると同時にジェメリィの腹に蹴りを決めた。

「ぐ、ふっ……中々強くなったね!“あの魔法”ナシで戦えるように頑張っちゃったカンジ?」
「黙ってください」

投げつけるように呟く。
目の前にジェメリィがいる限り、彼女は確実にアランの過去について語る。アランはその度に苦痛を覚える。
だけど、いちいち俯いている暇はない。
カトレーン本宅にいるティアを助ける為にここにいるのだから。
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