第三章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
第三章
「今日は。随分急がれたんですね」
「君にね。贈り物があるから」
そう少女に告げた。
「だからだよ」
「贈り物ですか」
「うん、これ」
今さっき摘み取ったばかりのあの薄紫の花を彼女に差し出した。
「これを君にね」
「この花をですか」
「嫌かな」
彼女の顔が微妙に変わったのを見た。それで不吉なものを感じたのだ。
「だったら」
「いえ、そうじゃないです」
しかしそうではないと言う。それどころかその顔がまるで花が咲くように晴れやかなものになってきたのだ。そう、まるで花が咲くようにだ。
「この花を頂けるなんて」
「名前は知らないけれど」
「私です」
少女はその晴れやかな笑みで彼に言った。自分自身だと。
「君だって?」
「そうです。私はこの花の精なのです」
今はじめて話すことだった。彼女はこの花の精だったのだ。
「この花、カトレアの」
「カトレア。それがこの花の名前だったんだ」
「そして私の」
こうも述べたのだった。
「私の名前でもあります」
「君は・・・・・・カトレアって名前だったんだ」
「そうです。私達は自分の名前はある方にしか教えないのです」
カトレアはオルキスにそう告げた。彼の顔をじっと見て。
「永遠に側にいてくれる方にしか」
「側にって。まさか」
「そう、そのまさかです」
またオルキスに告げてきた。
「私達にとってカトレアを捧げて下さることは愛の証。それを受け取りましたから」
「僕と。ずっと一緒にいてくれるんだね」
「駄目でしょうか」
そうオルキスに問う。
「私では」
「いや、そんなことはないよ」
オルキスは首を横に振ってそれを否定した。
「むしろ。僕は」
「オルキス様は?」
「僕の方がずっと君に側にいて欲しいんだ」
カトレアを見返して告げた。
「君に。僕の方こそ」
「では。宜しいのですね」
「うん」
強い声で頷くのだった。
「御願いするよ」
「わかりました。それでは」
カトレアは自分自身を受け取った。それで全ては決まった。
その瞬間わかった。自分が今までどうして楽しめなかったのか。そして何故彼女と一緒にいると楽しいのか。それがわかったのだ。
「カトレア」
またその彼女に声をかけた。
「はい」
「何て言ったらわからないけれど僕は」
「オルキス様は?」
「君を見ていると楽しくて仕方がない。君と一緒だと」
「それは。私が好きだってことですか?」
「えっ!?」
そう言うのかと思った。そこまではとても考えられなかったのだ。
「私が好きだからですよね。そう考えられるのは」
「そうだったんだ」
今はじめてそれがわかった。まるで夢みたいな気持ちになった。
「僕は君のことが」
「私もです」
「君
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ