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雲は遠くて
9章 恋する季節 (3)
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9章 恋する季節 (3)

280席がある、ライブ・レストラン・ビートは、
ぎっしりと、人だらけであった。
チケット(入場券)は、
ソールドアウト(完売)だった。

ロック・バンドのクラッシュ・ビートと、
ピアニスト・松下陽斗(はると)の、
(はつ)コラボレーション(共演)は、
アンコール曲・『恋する季節 』で、
客席は、オールスタンディングとなった。
そして、10時には、()りやまない
拍手のなか、ライブは終了した。

閉店は12時であった。半分以上の、客の引けた、
フロア・後方の、バー・カウンターや、テーブルで、
ライブの打ち上げが始まった。

陽斗(はると)さんのピアノがあると、ポップスでも、
ジャズでも、R&Bでも、いいよね。
アンサンブル(演奏)の(はば)が広がるし。
今夜なんか、満員のお客さんが、きっとみんな、
感動と満足だったんじゃないかな」

ビールを飲みながら、森川純が、テーブルの
(となり)にすわる、松下陽斗に、そう語りかけた。

「ありがとうございます」といって、二十歳(はたち)
陽斗もビールを飲む。

「今夜、ぼくが、がんばれたのも、クラッシュ・ビートの
演奏が、すばらしいからですよ。
純さんのドラムもすばらしかったです。
メトロノームのように、正確でありながら、
微妙(びみょう)()らぎがあったりして。
それが、また、いい・・・」

「アッハッハ。おれは機械みたいには、なれないしね。
感情が、微妙に、ドラミング(演奏)にあらわれちゃうんだ。
ビートルズのリンゴ・スターとか、スティーヴ・ガッドとか、
ジョン・ボナームとかの影響も受けてるけどね」

()らぎというか、ずれというか、それがあるから、
人間らしくて、うつくしい音楽が生まれるんだと思います」

「そうだね、そんなことだよね。
おれたちは、そんな音楽観が、一致しているから、
いっしょに、気分よく、楽しい演奏ができるんだよ。
これからも、よろしくお願いしますよ。陽斗(はると)さん」

「ええ、こちらこそ、よろしくお願いします」

打ち上げには、このライブハウスの経営をする、
株式会社・モリカワの社長・森川誠(まこと)
その弟の副社長の森川学(まなぶ)
社長の長男、森川純の兄の、森川良(りょう)もいた。
また社長の親友で、清原美樹の両親の、
清原和幸(かずゆき)、美穂子の姿もあった。
店長の佐野や店のスタッフも社長たちに挨拶(あいさつ)をした。
盛りあがったライブに、誰もが、笑顔であった。

クラッシュ・ビートのメンバーの母校の
早瀬田(わせだ)大学の先輩・後輩(せんぱい・こうはい)、
松下陽斗(はると)在籍(ざいせき)する
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