第一章
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としている。その二人が顔を背け合っているのである。
「あの二人の喧嘩の原因って何だったっけ」
「何か菅生の奴があれだってさ」
「浮気でもしたとか?」
「違うよ。志賀直哉読んでいてさ」
高校生が読む作家としてはオーソドックスであると言っていい。
「それを神崎の奴が見て怒ったんだって」
「何で志賀直哉読んでいて怒るのよ」
「神崎太宰好きだかららしいな」
だからだというのである。
「太宰が志賀直哉を嫌っていたってことでな」
「何か下らない理由ね」
「向こうの二人と同じで」
ここで皆相変わらず言い争いを続けている丈瑠と優子を見る。二人の喧嘩は熱戦である。
「どっちにしろ。クラスの中でカップルが二つも喧嘩してると」
「厄介だよなあ」
「全く」
皆はあ、と溜息をつくのだった。とにかく喧嘩が終わらない。彼等はその日はずっと喧嘩のままでお互い熱戦と冷戦を繰り広げていた。
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