第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
四十七話 歪み・綻び
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劉禅が出席するという事。地上に降りれば永琳から逃げる事が出来るといきり立った輝夜は殆どごり押しの様に名代を取り付け地上に降りた。
後は自身の能力の『須臾』を使い周りに気付かれる事も無く脱走に成功したのだ。だが彼女はこの時点で二つほど大きな見落としをしていた。
月に居る間全くと言っていいほど自分の能力を使っていなかった彼女は考え無しに能力を行使してしまった為に霊力と体力を使いきり疲労困憊で満足に動けなくなったのである。それに加えて―――――
「……………………お腹空いた」
体力回復の為に身体が栄養を求めるのは不老不死であろうと変わらないという事実を思い知らされていた。月では衣食住に困る事など無かったので空腹になるとは彼女は気付いていなかったのだ。
食べ物を購入しようにも逃げる事しか考えていなかった彼女は地上で使える通貨を持っていない。この状況で彼女の脳裏をよぎるのは――――
「…………わたしって餓死しても生き返るのかしら?…………えっ何つまり――――餓死して生き返ってまた餓死して…………どうしてわたしがこんな目に遭わなきゃならないのよッ!!全部全部あのくされアマのせいよッ!!」
永琳への憎悪であった。あながち間違ってはいないという事実ではあるのだが。
「…………もう…駄目――――限界」
そんな言葉を吐き出した直後に輝夜はその場に倒れこんでしまう。そして意識を手放そうとした時、
「ちょと!貴女しっかりしなさい!大丈夫!苦しいの!」
倒れていた彼女を抱き起こし必死にそんな言葉をかけてくる少女。輝夜は薄っすら目を開き一言だけ発した。
「………………ご飯」
「…………………………は?」
腰近くまであるストレートの黒髪と深い黒色の瞳、身に付けている桔梗柄の着物は上質な生地を使っていると見て分かり彼女が裕福な家の出だと分かる。
そんな彼女が暫し沈黙しそして輝夜の言葉の意味を理解すると大きな溜息を一つ吐く。そして、
「…………何て言うかこう――――どっと疲れたわ。必死になった私が馬鹿みたい」
「…………わたしには死活問題……なのよ」
呆れ顔だった少女は困ったような笑顔を浮べると首だけ振り返り後ろに控えていた従者らしき男性になにやら指示をだす。すると男性は輝夜を抱き上げ停めてあった牛車の屋形へと寝かせその後に少女も乗り込んできた。
「これから家に連れて行くから、着いたらご飯を食べさせてあげるわ。それにしても貴女乞食には見えないわね?結構小奇麗な服を着てるし」
「…………誰が乞食よ……」
動き出した牛車の振動に揺られながら輝夜は自分を乞食扱いした少女を弱弱しく睨み付けたがすぐに今の自分が乞食の様な状況なのに気付き愕然とした。
少女は
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