第二章
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ーセウスは今度はアリアドネの言葉に応えるのであった。
「私が案内させて頂きます。それではこちらに」
「わかりました。それでは」
こうして彼はアリアドネに案内されてラビリンスの入り口に向かうことになった。そこは地下へと向かう廊下と階段でありテーセウスはアリアドネが手に持っている松明の灯りに導かれて先を進んだ。その中で彼女は後ろにいる彼に対して話し掛けてきたのであった。
「あのですね」
「はい、何か」
「貴方にお渡ししたいものがあるのです」
彼女はこう彼に言ってきた。彼の方を振り向いて。
「私にですか」
「はい、これです」
こう言って彼に赤い丸いものを手渡してきた。それは。
「これは」
「糸です」
彼女は彼に答えた。
「糸ですか」
「ダイダロス様がどうして迷宮を行き帰りできるかおわかりでしょうか」
「道を全て知っているからではないのですね」
「それは違うのです」
彼女の言葉ではそうであるらしい。テーセウスはそれを聞いて意外にも思うのであった。
「実のところは」
「ではどうして行き来されているのですか?」
「それこそがこれに謎があるのです」
アリアドネは糸の玉をテーセウスに見せながら語るのであった。
「この糸に」
「糸にですか」
「そうです」
また彼に語る。真剣な面持ちで。
「この糸が先に通った道を教えてくれます」
「垂らすことによってですね」
これはテーセウスにもわかった。
「それで先に通った道を通ることなく」
「そうです。ではおわかりですね」
「はい」
テーセウスははっきりとした言葉でアリアドネに応えたのであった。
「では有り難く。お受けします」
「それでですね」
ここでアリアドネの様子が少し変わった。態度がよそよそしいものになりそうしてその白い顔が少しではあるが赤らんだのである。
「あの、ラビリンスの奥にいる魔物ですが」
「ああ、あれですね」
話がそこに移った。
「何でも身体が人で頭が牛だそうですが」
「そしてとてつもない怪力を誇っています」
彼女の方からもそれを語る。
「ですがそれでも。怖れないで下さい」
「その魔物をですね」
「そうです。何があっても」
ここまで言うのであった。
「それだけは御願いします」
「私は。怪物も魔物も怖れません」
しかしであった。テーセウスの言葉は変わらない。不敵で自信に満ちた笑みを浮かべてこう言葉を返すだけであった。それで充分であった。
「それでは。そういうことで」
「では。御願いしますね」
「はい。それでは」
こうして彼はアリアドネから糸を受け取ったうえでラビリンスに向かうのであった。迷宮の入り口にいる兵士達に挨拶をしてから中に入る。そこに入るとすぐに糸を垂らしはじめる。そうして少しずつだが
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