第三章
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第三章
二人きりの薔薇
この薔薇を見つけたのは偶然だった。たまたま通り掛かって見つけた。本当にそれだけだった。偶然見つけてそれを一人で楽しむつもりだった。
けれど次の日それを見に行くとそこには一人の女の子がいた。同じ学校でいつも遠くから見ていたあの女の子だった。まさかここで出会うとは思ってもいなかった。
彼女は薔薇を見て微笑んでいた。今まで見たこともないような奇麗な顔で微笑んでいたのだった。その笑顔を見ていると僕も笑顔になった。
僕に気付いてこちらを振り向いてきた。僕のことは名前だけは知っていたようだ。ふと口に出す感じで僕の名前を呼んでくれた。
この薔薇を見に来たのかと尋ねてくる。その通りだと答えるとさらに明るい笑顔を僕に見せてくれた。今度は薔薇にではなく僕を見てくれて笑っていた。
その笑顔にふらふらと誘われて僕も薔薇に近付く。そうして彼女の隣に来てその薔薇を見る。彼女は僕が隣に来ても嫌な顔一つせず一緒に薔薇を見てくれた。
これが全てのはじまりで。薔薇は僕達二人で見る薔薇になった。ふと見つけただけの薔薇が僕達二人の薔薇になってしかも僕達を結びつけてくれた。かけがえのないささやかだ
けれど奇麗な薔薇。薔薇と出会ったのも彼女と出会ったのも偶然でしかないのだけれど。その偶然に感謝して薔薇も彼女もずっと愛していたいと思った。二人きりで。
三部作 完
2009・2・23
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