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戦国異伝
第百七十三話 信行の疑念その十三
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くとよくないのう」
 退きの名人佐久間も言ってきた。
「前に出るべきじゃな」
「そう思うか、御主は」
「わしも退くばかりではない」
 それで織田家の武の二枚看板にはなれない、佐久間は柴田程ではないが攻めることでも優れた采配を見せているのだ。
 だからだ、ここではこう言うのだ。
「攻めるとするか」
「そういうことじゃな」
「ははは、朝倉宗滴殿も本願寺も武田もかなり強かったが」
「上杉じゃ、今度は」
「相手にとって不足はないわ」 
 あえて明るく言ったのだった、ここで沈んでは心から負けてしまうからだ。
「思う存分戦うか」
「そういうことじゃな」
「うむ、ではな」
「いざ加賀へ」
 佐久間はむしろ柴田より明るく言ってみせた。
「参ろうぞ」
「それではな」
 こうした話をしながらだった、柴田達はまずは北ノ庄に向かった。そうしてまた新たな戦いに入ろうとしていた。


第百七十三話   完


                        2014・3・1
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