第十八話 姉妹の力その十
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「私達も可愛がってくれてるわ」
「そうなんだな」
「けれど。私達が中学校を卒業する直前位ね」
「ドイツに行ったの」
黒蘭も言ってきた。
「二人で」
「私達は残ってね」
「ここで暮らしてるの」
「あとこのお部屋の近くに義理のお祖父ちゃんとお祖母ちゃんもいるから」
「寂しくもないわ」
「お医者さんの養子か」
薊は二人の身の上を聞いて述べた。
「何かと大変そうだな」
「二人共忙しいから」
鈴蘭が薊の今の言葉に答えた。
「私達は二人でいることが元々多いのよ」
「だから二人でも寂しくないんだな」
「そうよ」
その通りだとだ、また答えた鈴蘭だった。
「別にね」
「そうか、けれどご両親がおられないって」
「ドイツで元気にしてるわよ、二人共」
「連絡は取ってるんだよな」
「ええ、メールや手紙でね」
そうしたことも忘れていなかった。
「そうしているの」
「事情はわかったよ、そうか」
「ええ、ただ実の両親はね」
「やっぱりわからないか」
「父親も母親も」
そのどちらも、というのだ。
「本当のことを言うと私達自身も」
「生まれた時から一緒だったけれど」
黒蘭も言うのだった。
「本当に双子の姉妹かどうかは」
「わからないわ」
「だよな、誰が親かわからないとな」
例え生まれた時から一緒にいてもだとだ、薊も二人に応えて言う。
「本当の兄弟かどうかもな」
「ええ、そうなるわね」
「こう言ったら気を悪くするかも知れないけれどな」
二人に気を使ってだ、薊はこの前置きを置いてから述べた。
「あんた達対象的だしな」
「実の姉妹には、っていうのね」
「思えないところもあるな」
そうだというのだ。
「どうにもな」
「そう言われることもあるわ、実際にね」
「やっぱりそうか」
「ええ、けれどね」
「私達はいつも一緒にいるから」
今度は黒蘭が薊に話した。
「姉妹よ」
「絆がね」
「そういうことか、じゃあな」
「私達は姉妹っていうのね」
「絆で」
「まああたしも孤児だからさ」
薊は自分のことも踏まえて話した、それも明るく。
「血縁とかはわからないけれど」
「血のつながりよりは」
「絆だよな、心と心の」
それで兄弟姉妹、家族になるというのだ。薊はケーキを食べつつ明るい笑顔で鈴蘭と黒蘭に対して話した。
「それだよな」
「そういうことよ、お義父さんとお義母さんにも言われたわ」
「絆で家族になるってか」
「だから私達は家族ってね」
「言われてきたわ」
「いいご両親だな」
薊は二人の今の言葉を聞いてしみじみともなって言った。
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