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美しき異形達
第十八話 姉妹の力その九

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「それね」
「そう、あそこはケーキとか洋菓子もいいから」
「買って来てくれてたの」
「何種類か買って来たから」
「そのうちの一つを選んで」
「一つと言わず二つでも三つでもいいわ」 
 黒蘭は裕香に景気のいい言葉で返した、とはいってもその声には表情は今も全くない。菖蒲のそれに似て無表情だ。
「別にね」
「三つもって」
「沢山買って来たから」
「だからなの」
「ええ、遠慮しないで」
 裕香だけでなく薊にも言う黒蘭だった。
「それではね」
「ううん、じゃあ」
「頂くな」
「紅茶は何がいいかしら」
 今度は白蘭が二人に問うてきた。
「ミルクがいいかしら、それともレモンかしら」
「いや、別にそのままでもいいよ」
「私も」
 二人は白蘭の今の言葉にこう返した。
「そこまで気を使ってもらわなくても」
「いいわ」
「だから遠慮しなくていいのよ」
 特にと言う白蘭だった。
「ミルクもレモンもあるから」
「ジャムもあるわよ」
 黒蘭は二人にこちらも出した。
「ロシアンティーも飲めるわ」
「何か豊富だな」
「私も姉さんも紅茶が好きだから」
 それで、というのだ。
「そういったものは揃えてるの」
「それでか」
「そう、だからね」
 それでだとまた言う黒蘭だった。
「何でも言っていいわ」
「じゃあミルクにするか」
「私はジャムで」
 二人は姉妹のもてなしに応えることにした、そうしてだった。
 それぞれのテーブルに座ってそのうえでだった、四人でケーキを食べながら紅茶を飲んだ。見れば白蘭もミルクティーだが薊と違いロイヤルミルクティーだ、黒蘭はストレートだ。
 その紅茶とケーキを飲みつつだ、鈴蘭が薊と裕香に言った。
「私達のことだけれど」
「孤児だよな」
「ええ、二人共ね」
「けれど血はつながってるよな」
「ええ、そうよ」
 その通りだとだ、鈴蘭は薊に微笑みながら答えた。
「生まれた時から一緒にいるわ」
「その時からかよ」
「私達は二人で生まれてすぐにお義父さんとお義母さんに養子にもらわれたの」
「本当のご両親はわからないわよね」
「ええ、そうよ」
 その通りだとだ、鈴蘭は薊にまた答えた。
「そこは貴女達と一緒よ」
「本当に皆孤児だよな」
「そうね、不思議なことに」
「そこが引っ掛かるな。けれどなんだな」
「ええ、中学三年までお義父さん達と一緒に暮らしていたわ」
「どんな人達だったんだよ、ご両親」
「二人共お医者さんで。悪い人達ではないわ」
 薊と裕香に現在系で話した。
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