第十八話 姉妹の力その八
[8]前話 [2]次話
「あたしは」
「私としては散らかってるわ」
「そりゃちょっと潔癖症じゃねえか?」
薊はまた首を傾げさせることになった、右から左へとメトロノームの様に。
「自衛隊の施設みたいに綺麗だよ」
「自衛隊ね」
「ああ、海自さんのな」
それ程だとだ、薊はショークを入れずに述べた。
「それ位に綺麗だよ」
「だといいけれど」
「うちの寮も清潔さには五月蝿い方だけれどな」
「寮よりもね」
裕香も言う。
「綺麗な感じね」
「だよな」
「姉さんが綺麗好きだから」
黒蘭は二人に説明した。
「私はあまり掃除していないわ」
「そうなのかよ」
「私はね」
「あまりそうは見えないけれどな」
「外見だけで人がわからないと思うけれど」
「まあな、そういうことか」
「そう、私はあまりお掃除はしないわ」
またこう答える黒蘭だった。
「姉さんよ」
「それはわかったよ、それで鈴蘭ちゃんは何処だよ」
「今はリビングにいるわ」
そこに、というのだ。
「もうすぐよ」
「そうか、じゃあな」
こうした話をしてだった、そのうえで。
二人は黒蘭に案内されてリビングに入った、そこは洋風のわりかし広い部屋だった。大きな棚がありそこに白い皿やガラスのカップが見える。
その部屋のテーブルのところに鈴蘭が立っていた、黒蘭のそれとは対称的に白いブラウスにロングスカートという洒落た服装だ。
その鈴蘭がだ、黒蘭を見て微笑んで言った。
「ちょっとね」
「今の私の服ね」
「お客さんが来るからお洒落したら?」
「別にいいわ、私は」
構わないとだ、黒蘭は姉に素っ気なく答えた。
「飾ることは好きじゃないから」
「いつも通りなのね」
「それにこの服の方が」
黒蘭はクールな表情のまま語った。
「描いていても気にならないから」
「汚れていてもなのね」
「黒はこのことでもいいわ」
「漫画を描いてもよね」
「そう、だからよ」
それでだというのだ。
「この格好でいいのよ」
「全く、相変わらずね」
「私は私よ、けれどね」
「ええ、折角のお客さんだから」
「もう紅茶は淹れてるわよね」
「今丁渡ね」
淹れたところだとだ、鈴蘭は妹に笑顔で答えた。
「美味しく飲めるわよ」
「楽しんで」
黒蘭は薊と裕香にも顔を向けて告げた。
「紅茶とケーキをね」
「ああ、ケーキか」
「買って来たケーキよ」
それを持って来たというのだ。
「山月堂でね」
「あっ、あの和菓子屋さんの」
裕香が黒蘭の今の言葉を聞いて返した。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ