始まりの予選
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を立て直し、俺に向かって腕を振った。
俺の体がいとも簡単に宙を舞った。宙には赤い水滴が綺麗に飛び、部屋を赤く染め上げた。相手は予想以上に強かった。俺の力じゃどうにもならないくらいに。
バタン、と俺の体が地面に叩きつけられる。背中に来る鈍い痛みと、胸の辺りから来る鋭い痛みが同時に押し寄せて来た。
力が抜ける。
熱が消えていく。
意識が飛んでいく。
俺の二度目の人生はこうも呆気なく終わるのか。あぁ、またひっそりと誰にも知られる事なく死ぬんだな…。いや、今回は色々な人が一緒だ。寂しくない。今度生まれ変わるチャンスがあるならもっと平凡に生きたいなぁ。普通に産まれて、普通に成長して、普通に学校通って、普通に社会人になって。普通に年とって、普通に死ぬ。そんな人生が良いなぁ。
が、その考えに俺は疑問を持った。
そもそも普通にってなんだ?特に代わり映えもないって事なのか?その人生って楽しいのか?それに俺が生まれ変わったら俺が俺じゃなくなるわけだろ?じゃあ、俺のままでいられるのはこれで最後…。このまま終わっても良いのか?
そして俺の意識は再びはっきりしてくる。
そうだ、このまま終わっちゃいけない!生き返った先に死が待ち受けていたなんてそんなものゲームだけにしてくれ。俺は生きる!生きてやる!終わりたくないんだ!
生きたい、その意思が火種になり、俺の精神を保つ原動力にしてくれた。
俺の周りに血溜まりが出来る中、俺は体を動かそうとする。体自体が石でできているかのようにビクともしない。必死に脳が指令する。動け、と。しかし、それさえも体は拒絶している。
「う……け……」
必死に声を絞り出す。掠れた声だがまだ何とか出せる。俺は今ある力を喉に集中させ、そして。
「動けぇぇ!!俺はまだ生きたいんだぁぁ!!」
出し切った…最後の力を…これでもう俺に余力はない。それに叫んだせいか、敵が俺に向かって歩き出したのが分かる。あぁ…これで俺の人生も本格的に詰んだのか……。
ーーお前はバカか?何をやり切ったような顔をしている
ふと直接脳内に声が響いた。誰だろうか。もしかして幻聴?とうとう俺もお迎えがやって来たのか。
ーーお前がそう望むならそう思って構わん。好きに死ね
声の主は少し機嫌の悪そうな口調で言う。それにしてもこの声は一体誰だ?どこから話しているんだ?そんな事を考えている内に敵は俺の真横に立っていた。そして人形は自分の腕を振り上げ、狙いを定める。
ーー二択だ。お前は生きたいのか?死にたいのか?
そんな事、はなから決まっている。
生きたい。
人形の腕は振り下ろされた。あ、終わった…そう覚悟した
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