第三十二話 真打ち
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。
「投げるのは三回まで。こういう投球制限がかかっているんです。だから、権城さんの出番も……」
「ま、俺は頑丈だからな。それじゃ残りの五回、食わせてもらうよ。」
タイガーの話を聞いて、惰性でやっていた投球練習にも力が入る。三番手投手、権城はその肩を急ピッチで仕上げ直していった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ブン!
「ストライクアウトォ!」
(ま、また三振……)
4回の表、飛鳥がまた一番から始まる打順を三者凡退に抑えれば
「ストライクアウトォ!」
「えっ、マジッ?」
その裏の攻撃を姿が帝東打線に手を出させずキッチリ討ち取り、試合は五回の表に入っていた。
「ふぅ……」
姿はまだ三回しか投げていないが、右肩を気にして、腕を回す仕草が増えた。
圧倒的実力。しかし、その代償として体への負担も大きいのだろう。痛い辛いは全く表情に出さないが、無理はさせられないというものだ。もう十分、帝東打線の勢いは食い止めた。
「権城くん、代打」
「はい」
五回の表の先頭、4番の姿の打順で紗理奈は動いた。代打権城。権城は既に準備して待っていた。
(俺が代打して、このままピッチャーか。またこりゃあ、すげぇ采配だな)
権城は不敵な笑みを浮かべて、ゆっくりと打席に向かう。
(……あれだけの好投の新道に代打?代打出す要素ある?そりゃ、7回コールドまであと三回しか無いけど)
マウンド上では飛鳥が首を傾げるが、しかしその目つきは権城の顔を見るや、一気に鋭くなる。
(ま、良いや。……こいつと勝負できるんだし)
かつてのライバルの登場に、また飛鳥の闘志が滾った。
ーーーーーーーーーーーーー
<五回の表、南十字学園の攻撃は、4番ピッチャー新道くんに代わりまして、権城くん。バッターは、権城くん>
エルボーガードとフットガードをフル装備。使っているのは赤色のバット。これは中学時代から変わらない。
権城英忠が左打席に入る。
「よう、お前と対戦となると、3年ぶりか?久しぶりに実力見せてもらうよ」
話しかけてきた大友に、権城は笑って会釈した。武蔵中央シニアの先輩後輩同士、点差もあって和やかなムードが流れる。
(ヘラヘラして……試合中よ?バカにしてるの?)
マウンド上の飛鳥は不機嫌そうに眉間に皺を寄せていた。8点差があっても、全く気持ちが緩んでいないのは大したものである。
(中学の頃はボコられたけど……今はアタシの方が上なんだから。……努力の違いを見せつけてやる。)
意気込んでサインを覗き込む飛鳥。
権城の構えは背筋の伸びた大上段の構え。雰囲気の良さは中学時代から何も変わっていない。
小さく振りかぶって、飛鳥は
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ