暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
神意の休息篇
29.宴後の一時
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ては騒がしかった美鈴と唯の存在は大きかったようだ。監獄結界の事件のせいであまり二人を案内することができなかった。それだけが彩斗の心残りだ。
 そのときだった。彩斗のズボンのポケットが振動した。
 スマートフォンがメールの受信を知らせる。
 ロックを解除して受信されたメールを確認し、驚愕する。

【親愛なる“神意の暁(オリスブラッド)”殿へ。まだ終わりではない。監獄結界は奴らの計画の始まりに過ぎない。ローブの魔導師には気をつけろ。“電脳の姫”より】

「ローブの……魔導師」

 あのときの記憶が呼び起こされる。そいつは彩斗が指一本すら触れることができなかった監獄結界の脱獄囚だ。そいつに気をつけろとはどういうことなのだろうか。
 だが、以前送られてきた“電脳の姫”のメールの内容は確かなものだった。
 つまり今回のメールも真実だ。
 そうなるとメールに記されている“奴ら”とは誰のことなのだろう。

「どうしたんですか、彩斗さん?」

 考え事をしていた脳に柔らかな声が響いた。

「いや、なんでもない。気にするな」

 彩斗は自分に言い聞かせるように夏音にも言う。
 するともう一通のメールを受信する。その内容を見て頬が緩んだ。

【今度は彩斗くんがみんなを連れてコッチに来てよね。by母より】

「彩斗君?」

「いや、今度はみんなで来いって」

 そう言いながら彩斗は液晶を友妃と夏音へと見せる。

「うん。雪菜たちも連れて行こうよ」

「ああ」

 “奴ら”がどうであれ彩斗のやることはただ一つだ。“神意の暁(オリスブラッド)”の力で仲間を護る。
 ただそれだけだ。




 波朧院フェスタ二日目の夜。最終イベントの花火大会で彩斗たちが宴の最後の一幕を迎えていたときだった。

「花火綺麗ですね」

 茶髪の肩に届くくらいの長さの少女が目の前に上がる大輪に目を輝かせる。

「そうか? ただの火薬が空で爆発してるだけだろ」

 つまらない物でも見ているように金髪の少年は呟いた。

「立上さんはロマンがないですね」

「逆に俺が花火綺麗とか言ったらどうだよ?」

「そんな立上さんも見てみたい気もしますけどね」

 茶髪の少女は今だ花火を見ている。

「それに俺たちは花火を見に来たわけじゃねぇだろ」

 気怠そうに少年は呟いて大きなあくびをした。

「そうですけど少しくらいならいいかなと思いまして……」

 茶髪の少女は落ち込んだように声がか細くなっていく。

「はあ〜……まあ、そんくらい楽しむぐらいいいよ」

 ため息交じりに少年は答えた。

「ありがとうございます、立上さん」

 茶髪の少女は満面の笑みで応える。


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