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ソードアート・オンライン ーBind Heartー
食べてしゃべって飛び跳ねて
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ど、もうあんな食材アイテムは手に入らないだろうな」
「そのときは、俺が頑張って取ってきます」
いや、無理あるだろ。
えっへん、とでも言いたげに胸を張るトーヤに、俺は呆れてため息も出なかった。
「あら。普通の食材だって腕次第だわ。トーヤ君も料理上手なんだから、覚えておくといいよ」
「は、はい! 精進します」
アスナがまるで生徒に言い聞かせる先生のように言うと、トーヤが微妙にぎこちない気をつけの姿勢で応える。
そのやりとりに少し笑うと、アスナはつい、と上を振り仰いだ。すっかり夜の闇に包まれた空には、しかしもちろん星の輝きは存在しない。百メートル上空の石と鉄の蓋が、陰鬱に覆いかぶさっているのみだ。つられて見上げながら、俺はふと呟いていた。
「……今のこの状態、この世界が、本当に茅場晶彦の作りたかったものなのかな……」
半ば自分に向けた俺の問いに、誰も答えることができない。
どこかに身をひそめてこの世界を見ているのであろう茅場は、今何を感じているのだろうか。
当初の血みどろの混乱期を抜け出し、一定の平和と秩序を得た現在の状況は、茅場に失望と満足のどちらをもたらしているのか。俺にはまるで解らない。
このデスゲームが開始されたのが、二◯二二年十一月六日。そして今は二◯二四年十月下旬。二年近くが経過した今も、救出はおろか外部からの連絡すらもたらされていない。俺たちにできるのは、ただひたすら日々を生きのび、一歩ずつ上に向かって進んで行くことだけだ。
こうしてまたアインクラッドの一日が終わる。俺たちがどこへ向かっているのか、このゲームの結末に何が待つのか、今は解らないことだらけだ。道のりは遥かに遠く、光明はあまりに細い。ーーそれでも、全てが捨てたもんじゃない。
「……それにしても知らなかったですねぇ」
それまで落ちていた沈黙を破ったのは、まるで感慨深げと言った風に吐かれたトーヤのそんな台詞だった。
「まさか、キリトさんがあのアスナさんとお付き合いしていただなんて」
「なぁっ……!?」
「えぇっ……!?」
お互いに顔を真っ赤にして驚愕の声を漏らした俺たち二人がマイペース全開な少年剣士の誤解を解くのに、そこから五分を要した。
その間、何故かアスナが俺をジトっとした目で睨んでいたのは、また別の話である。
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