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ソードアート・オンライン ーBind Heartー
食べてしゃべって飛び跳ねて
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ーー文字通りシチューが存在した痕跡もなくーー食い尽くされた皿と鍋を前に、トーヤがゆったりと手を合わせた。
「ごちそうさまでした……」
そのまま脱力しきった顔で椅子の背もたれにぐでっ と寄りかかる。
それを見て、アスナがふっと笑って「お粗末さまでした」の一言。それから深く長いため息をついた。
「ああ……いままで頑張って生き残っててよかった……」
まったく同感だった。俺は久々に原始的欲求を心ゆくまで満たした充実感に浸りながら、不思議な香りのするお茶をすすった。
饗宴の余韻に満ちた数分の沈黙を、俺の向かいでお茶のカップを両手で抱えたアスナがポツリと破った。
「不思議ね……。なんだか、この世界で生まれてずっと暮らしてきたみたいな、そんな気がする」
「……俺も最近、あっちの世界のことをまるで思い出さない日がある。俺だけじゃないな……この頃は、クリアだの脱出だのって血眼になる奴が少なくなった」
「攻略のペース自体落ちてるわ。今最前線で戦ってるプレイヤーなんて、五百人いないーーあっ」
しまった、というようにアスナが口元に手をやった。実際、俺もうっかりしていたことだ。
今この部屋にいるのは、俺たち二人だけではない。攻略組として最前線に出ていない少年、トーヤもこの話を聞いているのだ。
今もこのアインクラッドには、前線に出る事ができずにいつ死ぬかもしれない恐怖にかられながら、毎日を過ごす人は多い。
トーヤもそのうちのひとりなのだとしたら、攻略組である俺たちが弱気になっている姿を見て、不安がってしまうかもしれないのだ。
しかし、俺たちの心配をよそにトーヤはよっこらせというかのように傾けていた頭を持ち上げた。
「知ってますよ。いままで何度か前線を歩き回って、いろんな人を見てきましたから。攻略の人たちだけじゃありません。みんな、この世界に馴染んできてしまっている……」
「そうか……」
心配は杞憂に終わったーーと言っていいのだろうか。
シビアな雰囲気をまとったトーヤを見て、やはりコイツもこの世界で過ごすひとりの人間なのだということを再確認させられた。
アスナもそれにつられたのか、物思いにふけるような美しい顔が橙色のランプに照らされている。
「でも、わたしは帰りたい」
アスナは俺たちに微笑みを見せると、続けて言った。
「だって、あっちでやり残したこと、いっぱいあるから」
その言葉に、俺は素直に頷いていた。
「そうだな。俺たちががんばらなきゃ、サポートしてくれる職人クラスの連中に申し訳が立たないもんな……」
お茶のカップを大きく傾ける。
ついでにトーヤの方に視線をやると、まだ手をつけていないカップを眺めながら、自分の手を握りしめていた。
「……そうですよね。帰らなき
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