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雲は遠くて
1章 駅 (その1)
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ない遠距離の交際になってしまった。

 美樹も(つら)い気持ちを、信也の親友でありバンド仲間の
純に打ち明けてたりしていた。

 信也は、そのつらい気持ちをあまり(おもて)に出さなかった。

 信也は、東京で就職することも考えたのであったが、
長男なので両親の住む韮崎にもどることに決めたのだった。

 大学でやっていたバンドも、メンバーがばらばらとなって
解散となってしまった。

 信也はヴォーカルやギターをやり、作詞も作曲も
ぼちぼちとやっていた。純はドラムやベースをやっていった。

 純の父親は東京の下北沢で、洋菓子やパンの製造販売や
喫茶店などを経営していた。

 いくつもの銀行との信用も(あつ)く、事業家として成功している。

 父親は、森川誠(まこと)という。今年で58歳だった。

 去年の今頃(いまごろ)の6月に、純の5つ年上の兄の(りょう)が、
ジャズやロックのライブハウスを始めていた。

 純はその経営を手伝っている。

 音楽や芸術の好きな父親の資金的な援助があって、
実現しているライブハウスであった。

≪つづく≫ 
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