由実「葉山君って、本当に変わってるよね」
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なものを付けており、周囲から明らかに浮いていた。比較的治安の良いこの街では尚更だ。
一方の女性は、ピンクのミニスカートに白のTシャツという明るい色で身体を纏っている。だが、薄地のTシャツは女性の持つそれを否応に強調させ、通行人の、特に男性の目を釘付けにするには十分な威力を持っていた。しかし、俺の視界の中に女性の顔は映っていない。男の身体が顔の部位だけを隠しているのだ。
……ここで、俺は『助けなきゃ』という正義感より先に、違和感を掴み取った。一体これが何なのか分からない。だが、今の風景がどこか計算されている気がするのだ。
明確な証拠はどこにも無い。現に女性はチンピラ三人に絡まれ、危険な状態にいる。しかし、周囲の人間は我関せずとばかりに彼らの一帯を避け、自分に被害が及ばないようにしている。
それらが変だと思っているわけでは無い。人間はどうしようもなく自分が大事だ。赤の他人が目の前で不幸に晒されようと、それに介入する人間は限りなく少ない。歳を重ねれば重ねる程、そうした勇気ある行動は消えていく。今の光景のように、知らないフリをして自分を守るのだ。
ただ、何かが違う。女性の顔だけが見えない。これが狙ったものだとしたら?ナンパされるような恰好をしている。これが狙ったものだとしたら?逆の観点で見ると、これだけの可能性が浮かび上がってきた。
つまり、女性が自分で今のフィールドを作りだしたという事だ。
そう考え、やはりそれは無いと思った。最近の俺は人間不信過ぎるのだ。だから、変な捉え方をしてしまう。やれやれ、俺も本山に感化されすぎたかもな。それと志乃の口車にも。
さて、これからどうしようか。通行人が静かに区画から離れていく一方で、俺は先程からその場を動いていない。とはいえ、俺が一人で飛び込んでも何とかなる筈が無い。俺は誰にでも優しい正義のヒーローじゃないんだからな。
結論を出したところで、俺は自転車を逆に向け、違う道から引き返す事にした。携帯を持って、改めてマイク探しをしなければならない。妹を困らせると、それはそれで面倒な事になるのは目に見えてるんだし。
俺が自転車にまたがり、いざ出発しようとする。しかし、そんな予定調和な流れはあっさり崩れる事となる。
「きゃあ!葉山君!葉山伊月君!助けて!」
……今、後ろから俺の名を呼ぶ声がした。気のせいだと思いたい。気のせいだと、思いたい。
後ろを振り返りたくなかった。知らんぷりをして、このまま自転車を漕いだ方が良いと、心の中の俺が叫ぶ。だが、今の声は明らかに知っている人物だった。
「県立藤崎高校一年の葉山伊月君!私を助けて!」
ヤバい。非常にヤバい。俺の個人情報が周囲に広がっている。そして、さっきの俺の推理が当たってい
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