第二章
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第二章
「俺は自分から義務を果たしたいだけだ」
「そうか」
「そうだ。だからこそ」
彼は言う。言葉にも迷いがない。
「自分から行くんだ」
「偉いわね」
「そうか?」
ルチアの問いにいぶかしむ目を見せてきた。口は真一文字に結ばれていて目だけが彼女を見ていたのであった。それでも強い目であった。
「俺は俺のしたいようにしているだけだがな」
「したいようになのね」
「御前ともな」
枯れたひまわりを見て言う。ひまわりは枯れて命が終わっているかのようだったが彼はそこに枯れたものとは別のものを見ていたのだ。
「このひまわりが咲く時に帰る」
それがフランコの言葉であった。
「いや、咲かせてみせる」
こうまで言う。
「俺が帰って来た時にな」
「言うわね。咲かせるなんて」
今の言葉には思わず笑った。
「そこまで自信があるのならね。私も安心できるわ」
「御前が何も悩むことはない」
傲慢とすら思える言葉であった。しかしその言葉がルチアを安心させるのも事実だった。
「何もな」
「わかったわ」
こうして彼は戦いに向かった。イタリアは最初はフランスに攻め込みそれからバルカン半島に、北アフリカに、ソ連に。次々と戦線を拡大させていった。拡大させる度に敗北を重ねてドイツ軍の足手纏いになっているのであった。ドイツ軍が呆れる程弱かった。
「また負けたらしいぞ」
「大勢捕虜になったらしいな」
そんな話が村でも話されていた。イタリア軍は連戦連敗で勝つことすらなかった。そうして遂にはシチリアまで奪われて呆気なくイタリア本土にまで上陸された。
ルチアの村はさして重要でもなくドイツ軍も連合軍も殆ど無視していた。ドイツ軍の築いた防衛線も破られここでも戦局はイタリアにとって悪かった。
そんな中ルチアはじっと待っていた。来る日も来る日もひまわりのところで立ってフランコを待っていた。村人達はそんなルチアに対して問うのだった。
「フランコを信じているんだね?」
「ええ」
ルチアの言葉にも迷いはなかった。彼女はフランコが必ず帰って来ると信じていた。だから今もこうして待っているのであった。
「必ず帰って来るわ」
「そうか。そうだよな」
「きっと」
村人達もその言葉を信じることにした。だがここでルチアの父が言うのであった。
「フランコはな」
「何?」
「安心していい」
娘に対して言ってきた。
「あいつは絶対に帰って来る。そういう奴だ」
「お父さんも信じているのね」
「当たり前だ。俺だって皆わかっている」
彼もフランコは昔から知っていた。だからこそ信頼していたのだ。そうした意味では彼もルチアも同じものを見ていたのである。
「戦争だって何時か終わるさ」
今度は戦争について言ってきた。
「負けるか
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