僕と家出と心変わり その1
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の通りだよ」
「………。……」
僕が正直に答えると、ムッツリーニは俯いて何かを考え始めた。少しの間沈黙して、ようやく口を開く。
「………俺の家に来るか?」
「ムッツリーニの家?」
「(コクリ)………最近、一人暮らしをしている」
そう言えば、と思い出す。一週間くらい前に、ムッツリーニが実家を離れて一人暮らしを始めたと僕に聞かせてくれたのを覚えている。
泊めてくれる、ということだろうか。嬉しいけど、ムッツリーニに迷惑はかけられない……。
「………嫌か?」
僕がずっと黙っていたのを、嫌と勘違いしたのかムッツリーニがしょぼんとしている。その気持ちはすごく嬉しい。
「嫌なんてそんな。嬉しいよ。でも……」
「………でも。だめなのか?」
「………」
すごく哀しそうな顔をして、肩を落とすムッツリーニ。その捨てられた子犬のような眼差しが、僕の罪悪感を更に刺激する。
僕は最終確認とばかりに、ムッツリーニへ問いかけた。
「いいの?」
「(コクリ)………これからどうするのか、ゆっくり考えれば良い」
「ありがとう。康太 (ギュッ)」
「(ジタバタジタバタ)………離せ!?」
顔を赤くして頻りに『離せ』と主張する康太だったが、本気で嫌がっているようには見えなかった。なんだかちょっとイジワルしたくなる。けど、この辺にしておこう。なんか注目されてるし。
「康太。家ってどの辺にあるの?」
「………商店街を出てすぐの住宅街。少し歩けば着く」
スタスタと歩き始める康太を追って、商店街を出た。夕日の明るみでオレンジ色に染まった住宅街を康太と二人で歩く。さっきまでの抱擁のせいで、康太との間に妙な雰囲気が流れていた。
「康太。康太は好きな人いる?」
「………」
「康太?」
「………。いる」
迷った末、小さな声で言った。康太は好きな人がいるのか。そう思うと、自分でもよく分からないのに心がチクリと痛んだ気がした。
「………明久は?」
「……いないよ」
「………そうか」
今度は僕が答える。今はいないと思う。姫路さんや美波に多少なりとも異性の魅力を感じていたのに、心からスッとその気持ちは消えてしまっていた。
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