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【短編集】現実だってファンタジー
デフォルト・フェイス
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話を多数決で押しつぶして平然とした顔をするだろう。何故なら彼らは――

『変化も冒険も何も求めてないんだ』

考える事と書くことが一致した。
怒るでもなく、すとんと腑に落ちた感覚だった。
彼等はゲームをしている筈なのに、何かがおかしい。その違和感の正体を掴んだ気がした。

『運営が何も言わないから、指示すべき模範的な方角が分からないからそうしているんでしょう?成功したらみんなのもの、失敗してもみんなの所為にできる。決めた範囲を超えなければ除け者にされることはない、除け者にされなければいい。ただ自分で考えてものごとを決めるのが嫌だから責任押しつけ合えて自分の傷つかない所に収まったんだ』

チャットに打ち込める文字数が限界に近づいたためいったん切って、立て続けに投下する。

『つまりあなた達はこのゲームを楽しんでなんかいない。単なる大衆迎合主義者(ポピュリスト)が民主主義ごっこしてるだけ。こんなたいそうな町を作ってるけど、金は運営が握っているんでしょ?要は運営の配る餌を待って涎を垂らしてる犬じゃないか。少しでも運営に抗議してゲームシステムを変えてもらおうとか思わなかったの?』

今までで一番チャットのやり取りが活発になった。突然の処理にサーバーそのものに大きな負荷が勝遭っているようだったが、構うものか。別に私が悪いわけでもないし。

『だいたい、この町を見て見なよ。本当なら和風の町、洋風の町、いろんな町が作れたはずだ。でも出来上がっているのはコンクリートジャングル、ありふれた都会の光景だ。珍しさもない。個性もない。ただ、自分の周囲を真似て作っていた人とトラブルになるかもしれないからってそれに乗っかっただけでしょ。つまんない現実世界の延長線上につまんない仮想都市が出来上がっただけだ。生産性もなければ楽しくもない』

返答がこない。こそこそと見えない所で多数派議論をやっているらしいが、文句を言ってくる奴はいない。何故ならその文句が他の人間と同じ不満かどうかが確認できないから。これだけの人数が居ながら向きになって反論してくるプレイヤーが一人もいないという事実がまた恐ろしい。
それほどまでに彼らは出るのが嫌なのか。目立つのが悪いことなのか。どれだけ社会において個性を潰しているのだろうか。ならば、仮想世界でも個性を殺さなければならないのなら――

『デフォルトフェイスにしなきゃ他人と会話も出来ないようなつまんない世界はさっさと出て行ったらいいんじゃないの?本当に物事を楽しむには、楽しむための努力ってものが必要なんだよ』

そう、少数派の私は堂々と言ってやった。



やがて、運営の「マジョリティ・ゲーム」が始まった。
内容はただ、2つの選択肢のうちより大衆的だと思う事柄にイエスとノーのどちらかを答えるだけというゲーム
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