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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
原作開始【第一巻相当】
IF・U「可能性の未来」
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 パンプキンパイを完食した俺は現在萌香を寮まで送ることにした。


 時刻は午後の五時を過ぎたところで部活に勤しむ生徒たちの声が聞こえてくる。


「別に送ってもらわなくてもいいんだが」


「まあ、たまにはいいだろう? 萌香なら心配いらないとは思うが、念のためな」


「はぁ……、まったく。過保護な兄だ」


 何気なく口にした『兄』という言葉に喜びを感じる。


 本当に俺を兄として認めているんだなと、改めて実感を覚えた。


「むっ……?」


 萌香と二人並んで廊下を歩いていると、不意に強い視線を感じた。


 殺気や敵意などは感じないが……。


 それとなく振り返ってみると、廊下の柱から顔を出した一人の女生徒と目が合った。


「……見つかった」


 柱の影から現れたのは透き通った紫銀の髪の生徒だった。


 口には棒キャンディーと思われるものを咥え、目は半開きで眠そうだ。


 学年を示す胸元のリボンの色は紺。ということは一年生だ。


 しかし、今年の一年のなかで彼女の姿を見たことは一度もない。出席簿にも記録はないし、もしかして編入生か?


 それなら俺にも知らせが入るはずだが……。


「さすがセンセー。すぐに私の視線に気がつくなんて、これも愛の力」


「なにが愛だ、ただのストーカーの間違いじゃないのか?」


「……ブラコンの萌香にだけは言われたくない」


「だ、誰がブラコンだ! 兄さんを意識したことなんてこれまで一度も――」


「そう。なら私がセンセーとくっついても問題ない。もちろん、物理的にも心理的にも」


 それまで仲良く俺を挟んで言い合いしていた二人にアクションが起きた。


 唐突に少女が俺の手に腕を絡めてきたのだ。


 二の腕に女の子特有の柔らかさとひんやりした冷気が伝わる。


 柑橘系の良い匂いが鼻腔をくすぐった。


 戦闘ならあらゆる状況に対処できる自負がある俺でも、こういった場面にはめっぽう弱い。女性関係初心者の俺の身体が反射的に強張ってしまった。


「なっ」


 絶句する萌香を尻目にぐりぐりと頭をこすり付けてきた。


 さらに筋肉がガチガチに強張り、それに伴って心臓の鼓動も早くなる。


(……熱くもないのに汗が出てきた)


 教師と兄の威厳を保つために必死にポーカーフェイスを保つも内心は結構一杯一杯な俺。そんな俺を余所に再び子猫たちのキャットファイトが始まる。


 萌
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