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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
原作開始【第一巻相当】
IF・U「可能性の未来」
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悪の状況も考えられる。
ましてや、ハクは妖力をコントロールする術を身につけ始めたばかり。自衛手段も限られており、実力は高いとは言えない。
「も――朱染。ハクを見なかったか?」
「ハク?」
首を傾げた萌香は目を瞬かせた。
「誰だ?」
「……いつも連れていた小キツネだ。朱染も見たことあるだろう」
「狐? 千夜は狐なんて飼ってたか?」
「なんだと?」
これはどういうことだ?
俺はいつもハクを連れているから、一緒にいるところを見たことがあるはずだ。なのに知らないという。
(一体なにが起きている……)
もう俺の乏しい推理力では事態を処理しきれない。
(……並行世界?)
ふとそんな単語が思い浮かんだ。
そんな馬鹿な……魔術干渉による空間の歪みなんて感じなかったぞ?
「一体なにが……」
「兄さん?」
顎に手を当ててあれこれ思考を巡らせるが、どれも現実的ではない。
本当に何が起こっているのやら……。
(まあハクなら大丈夫だろう。自衛手段も教えてあるし、隠行にかけてはそれなりだからな)
嘆息する俺に萌香が首を傾げた。
「…………いや、なんでもない」
説明したところで理解できるはずがない。
結局、そう言うしかなかった。
(はぁ……まあ追々考えていくか)
それよりいい加減ここを出よう。
立ち上がり背広を羽織る。
「そうだ兄さん、このあと時間はあるか?」
「ん? 大丈夫だが」
保健室を出ると急に腕を組んできた。さも、それが当たり前だというように自然な所作で。
急接近してきた萌香に思わず身体が一瞬強張る。
「ど、どうしたんだいきなり」
「――? なにがだ?」
「いや、なにがって……」
なんなんだ、本当に一体なんなんだ!?
萌香の体温やらフローラルな香りやら、二の腕に伝わる女性特有の柔らかさに心拍数が上昇する。
あの少女だった萌香が女に成長しているのだと感じさせられた。
「それより兄さん。時間があるならちょっとこっちに来てくれ」
萌香に腕を引っ張られるままついて行く。
たどり着いた先はとある部室だった。
(ここは確か新聞部の……)
新聞部が活用している部室だ。ちなみに顧問は猫目先生である。
放課後だが今は使用していないらしく、部室の中は無人だ。
部室の中央に置かれている長机には作成途中の新聞が乱雑に置かれて
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