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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
原作開始【第一巻相当】
IF・U「可能性の未来」
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しかし今は、萌香の口から出た思いがけない単語にそんな余裕も吹き飛んでいた。
――待て……今、なんて言った……?
人知れず表情が強張る。
萌香が、『兄さん』って呼んだだと? 先生ではなく?
――まさか、記憶が……?
萌香には記憶の封印処理が行われている。
というのも、アルカードの一件でトラウマを抱えてしまった萌香は俺という存在が心の傷を開くカギになってしまったからだ。そのため、俺と過ごした日々もろとも、俺という存在を記憶の彼方に追いやり封印した。封印を施したのは他ならない俺自身である。
そのため、萌香は俺をただの学校の教師であり、自身の所属するクラスの担任としか認識していない。事実、萌香が入学してから今まで彼女に先生、もしくは須藤先生としか呼ばれていない。記憶が封印されている限り『兄さん』呼ばわりする理由がないのだ。
デスクに桶を置いた萌香は眦を吊り上げて腰に手を当てた。
「まったく、心配したんだぞ! いきなり倒れたと聞いたときはビックリしすぎて息が止まったくらいだ」
「――……いつからだ?」
「ん?」
「いつから、記憶が戻ったんだ?」
「は? 記憶?」
目をパチクリさせた萌香は可愛らしく首を傾げた。
一人混乱しながら事態を整理しようと懸命に脳をフル回転させているが、正直呑み込みきれずにいる。
確かに、いつかは記憶が戻って、嘗てのような関係を築ければと思っていた。
なんの前触れもなく、いきなり記憶が戻っていました的な発言だと?
想定外にも程がある……ッ!
「なにを言ってるんだ?」
コイツ、頭大丈夫か……? とでも言いたげに俺の顔を窺う萌香。
怪訝なその眼差しにこちらは困惑を隠しきれない。
「兄さん……。いきなり倒れるくらいだ、やっぱり疲れてるんだよ」
優しく諭すような口調。その表情は親しい者にに向けるソレであり、ここ数年は見ることが叶わなかった懐かしい顔だ。
「何故?」という疑問と、「兄と呼んでもらえた」という歓喜の念が鬩ぎ合うなか、とりあえずハクと合流することを優先した。
再度、気配を探る。
「……んん?」
いつも側で感じていた気配が一向に掴めない。なにか結界で阻害されているような感覚も視られない。
俺の探知領域は妖怪学園を中心に半径三十キロをカバーできる。それで反応がないということは、ハクはこの近辺にはいないということになる。
(あいつの身になにかあったのか……?)
ここは妖怪が跋扈する場所。弱肉強食の世界。故に最
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