受け継がれた意地
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……それを感じてしまえば華琳は覇王では無くなる。
鼻で笑って受け流す……出来るはずも無い。それは最も尊ぶべき、人として生まれた時点で向けられてしかるべきモノ。
華琳では絶対に手に入らないモノを、秋斗だけは持っていたのだ。なればこそあれだけの狂信を齎せた。
「……そういうことか」
あらゆる感情が華琳の心を埋め尽くした。
特に不快な感情が大きく湧く。普通なら許容出来ない。絶対に認めたくない。されども、最効率の戦場を展開できる化け物部隊を作り出す為には認めるしかない。
その想いを向けられれば、華琳は抗わざるを得ないだろう。先導する者であるが故に、彼女はその想いを“明確なカタチとして向けられる”わけにはいかないのだ。
――だから……部隊には心の内に持たせるしかない。私も、季衣も、流琉も……部隊の想いを聞いてはいけない。私達自身が胸の内に持つ、誇りの為に。
「華琳様ぁ。兄ちゃんにしか出来ない事ってなんですか?」
素直に尋ねてくる季衣に、華琳は微笑みを向けた。
「ふふ、そうね……言うなれば、あなた達が里帰りして確かめてきたモノに近いわ」
首を傾げて並ぶ季衣と流琉の頭を優しく撫でた。近しいモノだけを言われてはさすがに分からないようで、尚も首を傾げるだけであった。
秋斗も分かっていないのか、教えて欲しそうに詠に目を向けていた。だが、教えるつもりは無いとそっぽを向かれている。
「詠と徐晃に後の事は任せましょう。親衛隊を私の望む水準まで引き上げる基礎を作っておきなさい。春蘭の部隊は先に引き上げさせるわ」
「えっ? 俺に出来ることってなんだ? 親衛隊の練兵なんかさすがに出来ないぞ?」
「か、華琳様? 親衛隊の練兵なら私と季衣が……」
秋斗が疑問を口から出すと、流琉も同意だというように繋いでいく。
ふ……と微笑んだ華琳は詠に一つ目くばせをして、コクリと頷いたのを見てから背を向けて歩き出した。
「いいのよ。練兵をするわけじゃないの。それより流琉、街に戻ったら何処かの店でお茶の時間にしましょう。少し疲れたから甘いモノが食べたいわ。季衣もいらっしゃい」
「やったー! おっかし♪ おっかし♪」
「おい……曹操殿――――」
「ああもう! まだ分かんないの!? 教えてあげるからこっちに来なさい!」
詠の呆れた怒鳴り声を聞きながら、華琳は流琉達を連れて歩く。なんとも言えないもやもやとした感情を胸に渦巻かせながら、誰にも言う事の無い思考を回していた。
――私の親衛隊には無くて徐晃隊にあったのは、徐晃を知ってしまったが故に湧きだした……身を震わせるような原初の悔しさ。見てくれでは守られる側に見える事の不甲斐無さを、どれだけ抗おうとも覆しようが無かった現実を……男にして異質な武力を持つ徐
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