受け継がれた意地
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問がようやく解けそうだ、と興味深々の様子。
「ええ。華琳でも、雛里でも気付けないモノがあった。気付けるわけなかったのよ。ボクだってこいつの言葉で初めて気付いたんだもん」
「徐晃の言葉?」
黒麒麟ならまだしも、戦場に立った事の無い秋斗から何故……と華琳は思考に潜り始めた。
それを見て、詠は悪戯が思い浮かんだ子供のような目を向ける。
「前に言ってたわよね? 悔しさは最高の餌だって。それが答えよ。ほんの些細な……それでも兵にとっては大切な、ボク達では辿り着けない答え。多分、華琳は華琳だからこそ、余計に分からなかったのよ」
以前、悔しさが餌とは確かに言ったが、既に檄や叱咤を飛ばしたりとソレを擽るように練兵だってしている。だから、華琳にとっては謎かけだらけの答えだった。
より一層、じくじくと苛立ちが湧きあがる。
――分からない。全く分からない。何が足りない? 私の部下でも最初期、それも発足から所属してる兵もいる。この私が作る世界の為に命を賭けてくれる兵士達だ。徐晃隊の失われた最精鋭となんら変わらない。否、それよりも強固な練度であるのも間違いない。誇り高さも、全てが上だと胸を張って言える。なのに……この違和感はなんだ。扱えば扱う程に、現存する徐晃隊にすら足り得ないと思えてくる……この物足りなさはなんなのだ。
詠の言葉を聞いて再び思考に潜っても思い浮かばなかった。
ギリと歯を噛みしめた華琳に満足したのか、詠は薄く笑った。
「華琳、あんたの親衛隊と徐晃隊の違いはね、あんたが切り捨てたモノの差よ。それを向けられて屈辱と取るか、それとも当然と取るか、はたまた鼻で笑って受け流すかは華琳次第」
「……言葉遊びは止めて率直に言いなさい、詠」
目を細めて言った。詠はその威圧的な瞳に気圧される事無く、ほんの少し哀しげに声を落とす。
「言えないわ。あのバカ達と同じモノを作りたいなら、あんたにだけは、はっきりきっぱりと言っちゃダメだって気付いちゃったもん。ただね、一つだけ教えられる。この大陸、いえ、歴史上に於いて黒麒麟と秋斗にしか出来ない事があるのよ」
わざわざ命令を下したというのに、素直に従わない詠に対して詰め寄りそうになるも、瞬時に抑え込んで華琳は思考を回す。
――黒麒麟と徐晃にしか出来ない事? しかも歴史上、ですって? 黒麒麟にあって私に無いモノがあるというの? 性別の違いと歪な知識以外は私の方が……っ……
やっと理解した。
詠が何を言わんとしているのか。華琳達のようなこの世界の有力者では絶対に気付けず、自分の部隊が徐晃隊に足りえない理由。それはたった一つの想いが足りないが故なのだ、と。
そして……華琳が自らそれを肯定してはいけない。
屈辱……間違いなく感じる。
当然
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