受け継がれた意地
[3/17]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
のだ。
喉の先まで出かかっているのが酷くもどかしい。今の演習で感じ取れた何かを知っているはずなのに、詠には咄嗟に出て来なかった。
華琳自らもそれを感じているから、詠を呼んでまでわざわざ実践演習というカタチを取ったのだ。
現在、徐晃隊の最精鋭を戦場で扱った事があるのは雛里と詠だけ。ソレとの相違点の指摘をこそ、華琳は求めている。雛里が此処に居ない為に。
――思い出せ。ボクはあのバカ達を扱った。たった数十人だとしても、副長と一緒の馬に乗って戦場で一体化した。だから、何が足りないか分かるはず。
思考に潜って思い出しながら、考え込んでいる秋斗をじっと見据えた。噎せ返るような戦場で、彼が何を作り上げたのか読み解く為に。
それでもやはり、分からなかった。
「しっかし……一つだけ気に食わんなぁ」
突如、苛立たしげに秋斗が言い放った。呆れているとも取れる表情で。
何事かと首を傾げると、チラと詠を一寸だけ見て、彼は小さく鼻を鳴らした。
「あの二人のことだよ」
すっと差された指の先、華琳に褒められて喜んでいる二人の少女が詠の目に入る。
「……なんで? 華琳もあの子達の使い方は分かってるみたいだし、連携も問題なかったじゃない」
また向き直って素直に疑問を零すと……秋斗は眉間に皺を寄せた。
「違う。あの二人は良かった。戦に出たことない俺でも分かる程に申し分ないと思ったさ」
「はあ? それじゃあんたは何が気に食わないって言うのよ」
二人が気に食わない、でも申し分ない、と言うちぐはぐな意見であったために訳が分からず、不機嫌をそのまま秋斗に言うと、
「そうさな、俺が気に食わないのは――――」
つらつらと説明を始めた。
聞くうちに、大きく息を吸った。疑問が解けた。足りないモノが何かを、明確に理解出来た。次第に、口が緩んで行くのが分かる。
「それよっ! 足りなかったのはそれっ! そりゃボク達じゃ気付かないはずだわ」
いきなり弾けた嬉しそうな声に、今度は秋斗が首を傾げる事になった。
意地悪い笑みを浮かべて、ふふん、と鼻を鳴らした詠は秋斗の袖をグイと引っ張った。
「早く華琳の所に行くわよ! あんたにしか出来ない事が出来たんだから!」
「うえぇ? 俺? なんで? 何が?」
「いいから!」
広がる晴天と同じく晴れ渡った思考を経て、上機嫌で進んで行く詠は、自分が普段しないような大胆な行動をしている事に気付くはずも無く……また、そんな事を気にもしない秋斗は、腕を引かれながら尚も首を傾げるだけであった。
†
春蘭を労い、両方の部隊を纏めさせるように言って、華琳は季衣と流琉の二人を褒めた後に一人思考に潜っていた。
確かに親衛隊は華
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ