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その魂に祝福を
魔石の時代
第二章
魔法使い達の狂騒劇3
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事は、百も承知だった。
(フェイトの母親の研究内容が知りたいところだな……)
 フェイトの言う『優しい母親』を豹変させるほどの何かが、そこにあるはずだ。そして、その何かこそがこの殺戮衝動の由来だろう。だとするなら――
(フェイトの母親を、殺すか?)
 殺戮衝動を鎮めるために。世界を滅ぼす怪物を生み出さないために。
(我が身可愛さなら、まだいくらかマシなんだが……)
 在りし日の力を全て取り戻したとはとても言えないが、それでも自分が堕ちればどれほどの被害を撒き散らすか分かったものでない。散々殺しまわり、その果てに次の誰かにこの業を押し付ける事になる。それくらいならば――
(全く、業が深いとしか言いようがないな)
 うんざりとして、舌打ちをする。要求される覚悟は、いつもこんなものばかりだ。
(アルフに母親について聞いてみるか。最悪、乗り込んで直接『話をつけて』もいい)
 もっとも、その母親というのは随分と優れた魔法使い――魔導師であるらしい。さすがに簡単にとはいかないだろうが。……だが、殺さずに殺戮衝動を鎮静化できるなら、それに越したことはない。
(まぁ、いずれにしても汚れ役だな)
 それは仕方がない。それが魔法使いの宿命だ。魔法使いの正義とは必要悪にすぎない。都合のいい『正義』の味方にはなれないのだから。
 ……――
 そして、夢を見た。よく似た親子の――よく似すぎてしまった母と娘の夢を。
 普通ではない方法で娘を生み出した母親は、しかし普通ではないその娘を愛していた。それさえも普通ではなかったのかもしれないが――本当に。心の底から。
 例えそれが、歪な願いの果てに生み出した、己の分身であったとしても。
(なのに、あの子はいなくなった……ッ!)
 魔女の嘆きが、夢を震わす。
(ああ、彼女が狂っていく……)
 そう嘆いたのは、誰だったのか。誰が嘆いたとしても、不思議ではない。何が彼女を狂わせたのか。そんな事は誰もが分かっていた。
 おそらく、今なら彼女の娘――母親の孤独を受け継いでしまった彼女でさえも。例え、それで娘の嘆きが癒される訳ではなくとも。……彼女達の関係は、愛憎という言葉を痛感させた。
(だが、何で今さらこんなものを俺に見せる……?)
 少しずつ狂い、歪み、壊れ、ついには本物の魔物へと堕ちていく。何で今さらそんなものを見せる?――自分には、今さらどうしてやることもできないのに。何故今さらになって、こんな夢を見せる?――そう嘆いたのは、一体誰だったのか。
(……今さら?)
 そうだ。何故今さらになってこんな記憶が蘇る?
(意味がある。必ずだ)
 夢幻の狭間で、確信する。これは間違いなく、もういない彼女からのメッセージだ。それに意味がない訳がない。そうだ――
(彼女を――『母親』を狂わせたものは、一体
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