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その魂に祝福を
魔石の時代
第二章
魔法使い達の狂騒劇3
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どこにもない。さすがに三日目ともなれば。
(まぁ、別に構いはしないんだが……)
 眠りの淵で、僅かに目を開く。闇の中浮かび上がったのは、フェイトの姿だった。また寝床――代わりに使っているソファに潜り込んできたらしい。ついでに言えば、朝にはこっそりと自分のベッドに戻るはずだ。ここ数日の経験からして。
(夜中に男の寝床に忍んでくるなんて、一〇年早い……なんてな)
 くだらない冗談を呟く。だが、馬鹿な事を言っている場合ではない。温泉郷での最後の夜、突然泣き出した彼女をあやし、寝かしつけてからずっとこんな調子だった。
 遠慮がちに甘えてくるその姿は、嫌でも昔のなのはを思い出させる。だが、フェイトをそうさせる理由は何だ?
(何だって事もないだろうが……)
 右腕が疼く。殺戮衝動は日増しにその存在を強めている。リブロム――ジェフリー・リブロムの時よりも圧倒的に早い。それはつまり、俺が世界を滅ぼす怪物になるまでの残り時間が圧倒的に短い事を意味する。幸い、まだ抑えられているが……次にジュエルシードの生み出す魔物と遭遇すれば、どうなるか分かったものではない。
(彼女は『母親』を憎悪していた)
 その憎悪こそが、殺戮衝動の由来だ。だが、話を聞く限り、フェイトが母親を憎悪しているとは思えない。むしろ、逆だ。だからこそ、おかしいのだ。
(この子の周りには、母親の影が少なすぎる)
 母親を思わせるのは、部屋に置かれたあの写真だけ。それですら、本当にフェイトと繋がっているのかは疑わしい。
 フェイトの話では、彼女の母親は優しい女性であるらしい。いわゆる良妻賢母というやつだろう。いや、良妻という意味では至らなかったのか。彼女が生まれてしばらくして、夫とは別れたらしい。だからなおさら娘を溺愛したのだろう。ほどなくしてそれまでの仕事を辞め、自宅での研究に没頭し始めた。……らしい。その辺りの経緯は、フェイトもよく覚えていないようだ。幼かった事もあるだろうし、両親の離婚という悲劇に対する衝撃も当然もあっただろう。覚えていない事自体は、別に不自然というほどではないが。
(問題は、その研究とやらだな……)
 その研究を始めてからしばらくして、母親は急に冷たくなったという。これは、アルフが言った事だが――フェイトも否定はしなかった。もっとも、フェイト本人が言うには、今行っている研究が巧くいかない事が原因らしいが。だが、
『あの女が優しかったなんて信じられない』
 吐き捨てる様に、アルフは言った。彼女がフェイトの使い魔になったのは、母親が豹変してからだという。詳しい話はまだ聞いていないが、その頃にはフェイトが語る『優しい母親』の面影などどこにもなかったようだ。
(研究の成果が上がらない焦燥には、俺も覚えがあるが……)
 目的があればあるほど、その焦燥は強くなる。そんな
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