魔石の時代
第二章
魔法使い達の狂騒劇3
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。俺もリブロムも、何故だか彼女には頭が上がらないのだから。
「―――ッ!」
右腕が疼く。暴走したジュエルシードが、どんな魔物を生み出すか知らないが――どうせなら殺しがいがある化物がいい。自分の呟きに、吐き気を覚えた。全く、この程度の衝動で魔物に成り下がった日には、恩師達に合わせる顔がない。
「フェイト」
「あ、光……。見て、ぎりぎりだけど暴走前に間に合ったよ」
遊歩道の一角。そこを横切る清流の傍らで、フェイトが嬉しそうに笑った。その笑顔に後ろめたさを覚える程度には、まだ殺戮衝動が収まっていなかったが。
「そのようだな。こまめに探し回った甲斐がある」
それは無視して、ジュエルシードを見上げる。中空に浮かぶその宝石は、魔力こそ撒き散らしているが、それだけだ。何の狂気も感じさせない。
(供物みたいだな……)
力を引き出すもの次第という意味では、確かに似ているかもしれない。そんな考えに、ふと悪い虫が疼き始めた。孤独を飼い慣らすには必要なものだが――さすがにこの宝石を対象にするのはまずいだろう。下手をするとミイラ取りがミイラになりかねない。残念だが、今の自分には過ぎた力だ。
「邪魔が入る前に、さっさと封印してしまおう」
今目の前に浮かんでいるジュエルシードがなくなったところで、フェイト達と出会う前に確保した三つのジュエルシードは今も俺が保有しているわけだが――それでも、未練を断ち切るような気分でフェイトを促す。
「うん」
頷き、封印作業に入った途端、聞き慣れた声がした。
「光お兄ちゃん!」
思ったより早い。というより、早すぎやしないか?――魔力が大気を揺るがし始めたのは、ものの数分前だ。予め探していなければ、到着できる訳がない。この二日間、隙を見ては探せそうな連中を監視してみたが、なのは達は明確な確信があってここに来ていたようには見えなかった。なのに、何故?
(偶然か。いや、待てよ……)
ここ数日、なのはがいつも身につけている鞄は何だ? 一体何が入っている?――あの、ちょうど偽典リブロムが収まりそうな大きさの鞄には。
(あの野郎……)
どうやら、妹を唆しているのは、あのネズミ野郎だけではないらしい。取りあえずありったけの呪詛を相棒に送っておく。そんなものを気にするような相棒でもないが。
「光さん! ジュエルシードを返してください!」
なのはの足元には、件のネズミ野郎――ユーノがいた。つくづく運の無い奴だ。
何も右腕が血を欲している今この時に姿を見せる事もないだろうに。
「お前との取引は破談している。自分の言い分だけ通そうってのは、いくらなんでも虫がよすぎやしないか?」
殺意に黒々と輝くその右腕を突き出し、告げる。ネズミ一匹では満足できないだろうが――無いよりはいくらかマシだろう。
「違うよ! 私
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