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その魂に祝福を
魔石の時代
第二章
魔法使い達の狂騒劇3
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何だった?)
 ――……
「あ、起きた? おはよう」
 目を開くと、視界いっぱいにフェイトの顔があった。思わず目を瞬かせる。
「光が寝坊するなんて、珍しいね」
 よほど間の抜けた顔をしていたのだろう。フェイトがおかしそうに笑う。
「ああ……」
 ぼんやりとする頭を抱えながら、身体を起こす。いつも起きる時間より、明らかに遅い。テーブルに突っ伏したアルフが、空腹を訴えている。
「夢を見ていた、ような気がする……」
 忘れてはいけない夢だったはずだ。だが、はっきりと思い出せない。何か鍵となるものがあれば、思い出せそうな気がするのだが。
「はっは〜ん」
 途端に、にやにやとアルフが笑う。怪訝に思い、視線を動かすと彼女は言った。
「さては女の夢だね? このマセガキめ!」
「……何でそう思うんだ?」
 女の夢、というのは間違いあるまい。そこまでは思い出せる。確かに知人の誰かが出てきた。……そう、それは誰だった?
「名前を呼んでたからね。……確か、モルモル?」
「……モルガン、だな。おそらく」
 欠片が全てはまり込んだ。ああ、思い出した。彼女の夢を見た。
(彼女を狂わせたもの、か……)
 そんなものは分かっている。だが、それが何を意味する。どんな意味があって、今蘇ってきた?――だが、今はそれを考えるべきではない。
「モルガン、って誰なの?」
 何故だか、心なし険しい視線でフェイトが睨んでくる。さて、何と答えるのが正しいのか。何にしろ、お互いに直接面識がある訳ではない。この関係を何と言えばいいのか。
「モルガン・ル・フェ。俺に魔法を教えてくれた先生の一人だ。リブロム……俺の恩人の相棒の奥さんでもある」
 いや、あの二人が籍を入れていたかどうかは思い出せないが。だが、何であれ反抗期真っ盛りの娘までいるんだからそれでいいだろう。
「何でそんな人を夢に見たのさ? イケナイ関係ってやつ?」
「まさか。彼女は旦那と娘を溺愛してるんだ。間違ったってそんな余地はないさ」
 特に旦那に関しては、『殺したいほど愛してる』を地で行ったくらいだ。愛憎劇という意味なら、こっちはこっちで相当なものである。
「まぁ、当時は散々しごかれたからな。魘されたんだろ」
 嘘ではない。人間としてのモルガンでさえ、あの二人を相手に互角に撃ち合えるほどの魔法使いだった。さらに魔物化したモルガンは、リブロムとその相棒をして、文字通りの死闘を強いられた相手である。というより、あの二人があれほど苦戦した相手は他にそう何人もいない。まぁ、『奴ら』はまた別格だが。
 ともあれ、彼らの死闘を追体験する事になった俺も、あの時はかなり深刻に死を覚悟したものである。そして――
(彼女こそが、全ての謎を解く鍵だった)
 ……そう。あの時も。


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