魔石の時代
第二章
魔法使い達の狂騒劇3
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止力として戦闘に特化した魔法使いの組織――つまり秘密結社アヴァロンは復活した。それには自分も一枚噛んでいる。……らしい。まだはっきりと思い出せないが――あまり本意ではなかったように思える。理由は何であれ、折角生き残った人間同士で殺し合いをさせる事になるのだから。とはいえ、それでもアヴァロンを復活させないとならない程度には、新世界にも魔物の――あるいは魔法の脅威は残されていたらしい。まだはっきりと思い出せたわけでないが、組織が整うまで……あるいはその後も、自分はその最前線にいたはずだ。
だから、自分にはアヴァロンの思想も根付いているのだ。あるいは、それこそが十三代目ペンドラゴンの遺志なのかもしれないが。
もっとも。自分が被った代償を考えれば、アヴァロンの思想――魔法使いの掟になど従えるはずもない。もちろん、旧世界のアヴァロンほどその影響力は強くなかったが……それでも、自分は最初から生粋の掟破りだった。
『結局のところ先代の後継者だってことだよな』
まぁ、確かに。恩師も大概変わり者ではあった。ついうっかり果物一つで借金王になってみたり、自分が所属する組織と敵対関係にある救済組織の指導者に気に入られてみたり、知人を助けるために、たった一人でもう一つの魔法結社の一つに喧嘩を売った事もあったのだから相当なものだ。簡単に思いかえすだけでこれだけの事があったのだから、概ね平穏とは程遠い生き方をしていた訳だが――常に選択と決断、それに伴う覚悟を要求される魔法使いらしい生き様だったのだろう。……残念な事に、彼の後継者である自分がその宿業も引き継いでいるのは疑いないようだが。
2
フェイトから連絡があった場所に向かう途中で足を止め、夜気を吸い込む。澄み渡った夜空から、優しく清浄な月明かりが降り注ぐ。心地の良い夜だった。
(月明かり、か……)
かつて自分が生まれ育った世界でも、月や星を心の拠り所とする集団がいた。とある地域に集まり細々と活動するその集団は、冷静に考えてみれば世界の終わりをも乗り越えた数少ない組織だった。今『故郷』がどうなっているかは分からないが、おそらくは今も生き残っているのではないだろうか。こうして夜空を見上げれば、そんな気がしてくる。
(綺麗なものだ)
柄にもなくそんな事を思ってしまうほど、心地のいい夜だった。夜気を吸い込み、吐き出す――と、確かに魔力の拍動を感じた。心眼を使わずとも感じるほどの魔力。臨界は近い。全く、野暮な事だ。この美しい夜には眠るような静寂こそが相応しいというのに。
「急いだ方がいいな」
足早に歩き出す。そろそろ妹も動き出すかもしれない。それどころか、恭也や忍、美由紀やノエル辺りまで出てくる可能性もある。あるいは士郎や――
(桃子が来たら、厄介かな?)
その時点で、全てが終わる気がする
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