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Ball Driver
第三十話 愛してるぜ
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……!)

肩の痛みがもどかしい。万全なら、こんな木偶の坊、チャッチャと片付けてやるのに。

(燃えてるね。そんなに私の事が嫌いかしら。……小さな体で精一杯粋がってるけど、ストレートもカーブも打たれて、プライドズタズタでしょうね。四死球で出したランナーを返されるなんて、最低のピッチングだし。)

闘志を燃やす紅緒とは対照に、実にクールな楠堂。これがスーパー一年生たる所以。

「「「この頃流行りの女の子ー(おい!)
めちゃくちゃノッポの女の子ー(おい!)
こっちを向いてよ葵ーー♪」」」

ただ、応援席から流れてくる「キューティーハニー」の応援歌に対しては少し恥ずかしそうだった。





(デカい奴には負けられない!それも、相手は年下の女なんだから!)

脂汗を滴らせ、顔を歪めながら紅緒は投じた。小さな体の右腕が、千切れんばかりに振られた。




カン−ーー



短い打球音が響いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー


「嘘だろ……」

ブルペンから楠堂の放った放物線を見送りながら、権城は思わず声を上げた。
白球は遥か彼方に小さくなって、神宮球場の青い外野席の中段に弾んだ。

「無理なく振って、この飛距離かよ……」

権城が驚いたのは楠堂のその涼しい表情、力みのないそのスイング。まるで“普通に捉えれば”ホームランになる事が分かってるかのような余裕たっぷりのスイングだった。

しかも、打ち砕いたのは紅緒が無理をして、死力を尽くして投げ込んだ144キロなんだから、たまらない。

「「「あおい!あおい!あおい!あおい!あおい!」」」

帝東応援席は大騒ぎでヒロインの名前を呼ぶ。
ガッツポーズもせずに淡々とベースを回る楠堂との温度差は最高潮だ。


「…………」

紅緒はマウンドで両膝に手を付き、俯いたまま動けない。まだノーアウト。帝東の圧倒的打力の前に、いきなり6点を失った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


カーーン!
「よっしゃぁー!!」

白石が拳を突き上げる。
紅緒は打球の方向を見なかった。打たれた瞬間に結果が分かって居たからだ。
打球はレフトスタンドに弾んだ。

「おぉー!?この回二本目ェ!?」
「やっぱり今年の帝東はすげぇな!」
「初回から8点たぁ、品田も形無しだな!」

観客席の雰囲気はすっかり緩み、帝東打線の恐ろしさに感嘆するばかり。
初回の攻撃は二死になっていたが、今の白石のツーランで8点目。初回ですっかり試合が壊れていた。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

まだアウト三つとれていないにも関わらず、紅緒は肩で息をして、大粒の汗がマウンドに滴る。健気にバッターを睨みつけて
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