第三十話 愛してるぜ
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みしていた。
<2番センター大西くん>
続いて打席に入るのは二番の大西。
小柄な打線のつなぎ役である。
「わっ」
送りバントの構えをした初球は、スライダーが膝下のデッドボールのコースに飛んできた。大西が慌てて避け、キャッチャーのジャガーも身を挺して何とかこのショートバウンドを止める。
(すっぽ抜けの次は引っ掛けたような球か。荒れてんなぁ。これは見ていくべきだな)
前島監督のサインに頷き、大西はしっかり球を見た。紅緒は大西に一球もストライクを入れられずにフォアボール。
「……っ」
ユニフォームの袖で紅緒はしきりに汗を拭う。
初回だというのに、その表情は実に苦しそうで余裕がない。自然と眉間に皺が寄る。
<3番ファースト榊原くん>
紅緒からもらったようなチャンスに、帝東恐怖のクリーンアップが登場する。まずは榊原。通算本塁打数は37本と、チームトップだ。筋骨隆々、袖から覗く上腕二頭筋が眩しい。
(ここまで荒れてると、逆に打つ気萎えるんだよなぁ。フォアボールもらえるのに打つのがもったいないような……)
榊原がベンチを見ると、前島監督は打てのジェスチャーを繰り返す。
(あ、打っていいんだ。でもゲッツーはダメだから……)
榊原は、甘いコースに入ってきた球を思い切りすくい上げる。
(空向いて打つだけっしょ!)
カァーーーン!
火の出るような打球がラインドライブとなってライトに飛び、深く守っていた紗理奈の前に弾んだ。
(これ行けるんじゃない?)
2塁ランナーの白石は打った瞬間スタートを切り、ホームを目指すが、三塁ランコーの制止にあった。
バシッ!
ライトの紗理奈からの大遠投がキャッチャーのジャガーに返ってきていた。これでは2塁からホームへは突っ込めない。
(すくい上げたのに、ボールの上っ面打ってラインドライブんなったって事は、やっぱ品田の球は想像より全然走ってねぇんだな。去年のイメージで振っちまったよ。本来ならスタンドだ。)
榊原は首を傾げているが、これで無死満塁。
初回から帝東が大チャンスを迎えた。
「タイム!」
次に迎えるのは帝東の四番、大友。
たまらず南十字学園、タイムをとった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「おい紅緒、そろそろ気合い入れろよ」
「まだエンジンかかってないか?今日ホテルの部屋から出てくんのも遅かったからなぁ」
紅緒としては、マウンドの円陣でこんな気安い口を叩いてくる譲二や哲也ですら今は鬱陶しかった。肩が痛い。今日遅くまで寝ていたのは、昨晩肩の痛みで中々寝付けなかったからだ。嫌な汗が次から次へと吹き出してきて、止められない。思うように投げられない苛立ちも募り、大きな声で叫
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