第三十話 愛してるぜ
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「……誰か代わり見つけてきていい?」
「ちゃんとボールは捕れますよ」
姿は呆れ顔の権城に微笑んで、タイガー相手に立ち投げを始める。立ち投げでも、姿の球は唸りを上げていた。確かにこの球はタイガーにしか捕れないだろう。権城は仕方なく、はしゃいでる瑞乃とキャッチボールを始める。
「……初回からブルペンに入るという事は、品田先輩の事、何か知ってるんですね」
「ん?姿も聞いたのか?」
「聞かずとも、準々決勝のあのピッチングを見ていればどこかおかしい事くらい分かりますよ。」
パシッ!
権城のボールが瑞乃のミットを叩き、良い音を立てる。
「ま、少なくとも、今日の紅緒ちゃんは長くは保たねぇな。誤魔化しで誤魔化されてくれる相手でも無いだろうし。」
「……権城先輩なら、そんな品田先輩の状態を分かっていれば、ご自分が先発に名乗り出るだろうと思ってました」
「ま、仕方がねぇよ。この夏は俺の夏じゃない。帝東との準決勝はまた来年あるかもしれんけど、紅緒ちゃんの準決勝はもう一生こねぇだろ。」
バシッ!
パシッ!
姿と権城、2人の投げる球がそれぞれのミットを強く叩いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「初回から勢いつけんぞー!」
「サザンクロスなんて押し潰しちまえ!」
「プレッシャーだプレッシャー!」
帝東応援団は、準決勝となるとブラスバンドもあり、学校の生徒も大勢駆けつけてきている。閑古鳥が泣いてる南十字学園の応援席とは全く訳が違った。
「「「おーとこにはーーー!
家族や!なかーまがー居る!
目指したのはーー!遥か遠くーー!
憧れーーーの甲子園ーーー!!」」」
地鳴りのような大応援が響き渡る中で、帝東の攻撃はスタートする。
<一回の裏、帝東高校の攻撃は、1番レフト白石くん>
白石は一番打者ながら180cm75kgの大柄な体格。長打力もあり、強打帝東のトップに恥じない風格を備えている。
(指示はスローカーブ待ち……)
紅緒の白石に対しての初球はスローカーブ。
(来たっ!)
白石はピクッとボールに反応したが、しかし手は出さなかった。紅緒のスローカーブは際どく外れた。
(……見ていけって指示も出てるからなぁ。それがなきゃ今の球は振ってたよ)
その後も攻めは変化球主体。そして……
ビッ
「当たった!当たった!」
ようやく紅緒が投げたストレートはインコースにすっぽ抜け、白石のユニフォームをかすめた。デッドボールで先頭が塁に出る。
(……本当に変化球攻めだぜ。そしてストレートもすっぽ抜けて、球速は136だ。こりゃ本当にどこかおかしいんだな。ここまで読みが当たるのは珍しいぜ。)
帝東ベンチでは、前島監督が不敵に笑いながら腕組
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