第四章
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第四章
「まあないわね、戦争やってるんじゃないですし」
「ええ」
「それか悪の組織が出て来るわけでもなし」
「特撮めいたところはありますね、どちらも」
「全くよ。本当におかしいって言ったらおかしいわね」
おばさんはまた言う。
「そういうところがね」
「ですよね。だから自然なのがいいです」
「わかったわ。まあ待つことね」
「はい」
このことはもう言うまでもなかった。やはり出会いは偶然や運といった要素が大きいのだった。このことは美香も極端ではないがわかっているのだ。
「それじゃあ。とりあえず合コンとかにも出て」
「そうしなさい。さて、と」
おばさんはここで左手にかけてある細い腕時計を見る。見れば時間はもういい頃だった。
「それじゃあ仕事にかかるわよ」
「はい。午前の続きですね」
「そうなるわね。課長がまた五月蝿いわよ」
「何かお昼になってすぐはいつも機嫌悪いですよね、課長って」
「あの人起きたてはいつもこうなのよ」
つまりいつも昼寝しているのだ。しかも寝起きが悪いときている。かなり癖が悪い。
「だからね。気にしないことよ」
「そうですか」
「そういうこと。他は別に悪いところないから」
「気にしないでですね」
「わかったらじゃあ」
掛け声と共に立ち上がって美香にも言ってきた。
「午後の仕事よ」
「わかりました」
こうして美香はおばさんと共に午後の仕事に向かうのだった。案の定課長は機嫌が悪くいらいらとした顔だった。しかし美香はそんな課長をスルーして仕事に向かう。おばさんに言われた言葉もすぐに忘れて今は仕事に頭を切り替えて真面目に働くのだった。
そんなごく有り触れた日常だった。休日に美香は奈緒と会っていた。イタリアンレストランでスパゲティを食べていた。屋外のテラスにおいて二人は赤ワインと共に真っ黒いスパゲティを楽しんでいる。
「やっぱりイカ墨って美味しいわね」
「ええ。最初はかなり驚いたけれどね」
「何て思った?最初」
奈緒は美香に対して笑顔で尋ねてきた。
「このスパゲティ」
「墨汁かけてると思ったわ」
美香は半分真顔で答える。
「こんなの食べられるかってね」
「東京の蕎麦みたいよね」
「ええ」
これが彼等のこのスパゲティへの最初の感想だったのだ。
「けれど食べてみればねえ」
「これが美味しいのよね」
「そうそう」
笑顔でその真っ黒いスパゲティを口の中に入れていく。見ればテーブルの上にはこのスパゲティだけでなくピザやラザニア、マカロニもある。かなり食べている。
「味にコクがあってね」
「口の周りが黒くなるけれどね」
「それは御愛嬌」
美香はここでグラスに入れてある赤ワインを手に取って口に含んだ。
「ワインでお口を奇麗にすればいいし」
「そ
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