第二十九話 打倒サザンクロス
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はある〜?」
間延びした話し方で質問され、生田は戸惑った。
「え、それは、はい。……次の準決勝を見据えた場合の、撒き餌かと……」
「おいおい、撒き餌なんだったら、それに合わせて変化球意識しちまったら敵さんの思うツボじゃないのよ?お前、自分の言葉同士で矛盾してんぞぉ?」
「え、あ、はい。失礼しました」
少し控え部員の生田をいじめた所で、前島監督は大友の方を振り返った。
「なぁ大友。お前、浦中が投げてるとして、二点差で競り合ってる中で、次の試合見据えて普段はしない配球、できるか?」
「……厳しいですね。しかも、そんな撒き餌の配球で打たれてピンチを作ってるとなると、その撒き餌の配球で最後の最後まで押し切るなんて無理です。僕なら、最低でも最後4番を迎えた段階で本来の配球に戻しますね。」
前島はふふん、と不敵に笑った。
「そうだな。例えウチでも、そこまで目の前の相手を舐めた真似はできない。ま、俺たちの想像の範囲内に収まるようなチームじゃないかもしれんが、俺はこの配球にはもっと別の理由があると見ている。生田!昨日の9回の品田のフォームと、初戦の品田のフォーム、交互に映してみろ!」
「はっ、はい」
生田が指示に合わせて、スクリーンに二通りの紅緒の投球フォームを映し出す。一方は初戦のフォーム、もう一方は準々決勝の最終回のフォーム。
それを見比べて、前島監督は確実に何かを感じ取った。
「神島!何が違うか分かるか?」
「はい。明らかに腕が下がって、体が早く開いてます。そして高めに抜ける事が多くなってます。」
「その通り。こういう変化は疲労が溜まって腕が上がらなくなってきたりしたら起こるもんだ。故障か何かは知らんが、明らかに品田のピッチングはおかしくなっている。中一日ではそう長くは持つまい。」
前島監督は立ち上がり、大声でナインに呼びかけた。
「俺はこの変化球主体の配球、今の品田の本性と見た!明日の狙い球はスローカーブ!そして、球を良く見ていけ!品田は必ずボロを出す!例えストレートが多くてもうろたえるな!ストレートは品田があまり投げたくない球、やりたくない全力投球を品田にさせてる時点で俺たちの思惑通りだ。じっくり粘って、必ず終盤に叩き潰す!」
「「「オッス!!」」」
前島監督は次に、飛鳥の方を見て、その鋭い視線に目を合わせた。
「神島!明日の先発はお前だ!」
「はい!」
「女同士の意地だ。絶対に品田に投げ負けるなよ。男の中で揉まれたお前の方が、絶対に強い!自信持っていけ!」
「はい!頑張ります!」
最後に前島監督は、食堂の後ろの方に居る部員まで見渡して、声を張った。
「控え部員達も!サザンクロスには応援すらない。準決勝の試合はこういう風にやるんだと、手本を見せてやれ!帝東野球
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