暁 〜小説投稿サイト〜
Ball Driver
第二十九話 打倒サザンクロス
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
……」

権城は、自分の中の熱い気持ちがどんどん萎えていくのを感じた。女の泣き落としに負けてしまうというのは何とも不本意だが、しかし、萎えた気持ちはどうする事もできない。泣いてOKだと思うなよと思う反面で、権城の腹は決まった。

「分かったよ。黙っといてやるよ。……準決まで来たこの夏を棒に振るかもしんねぇけど、準決まではまた来年でも来れらぁな。勝つより大事な事があるのは、俺も知ってるよ」

権城は吐き捨てるように言って、部屋を出て行った。権城は部屋の前で、やれやれ、とため息をついた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「じゃ、準決勝に向けて、ミーティングを始める。お願いします。」
「「「しゃあす!!」」」

大友が挨拶すると、帝東の野球部寮の食堂に野太い声が響く。
女子の出場が認められるようになってかなり長いが、帝東の部員は殆どが男。これは伝統だろう。むしろ南十字学園みたく女ばかりなのがおかしいし、その女がどれもこれも実力者ばかりなのがさらにおかしいのだ。

「次の相手は、予想通りサザンクロスです。昨年にも対戦してますが、昨年からメンバーはあまり変わってません。」

ベンチ外の偵察部隊が、データを基にした分析を全員に伝え始める。

「初戦こそ20-0でしたが、それ以降は2-1、3-0、そして昨日の準々決勝では2-0と、僅差をモノにして勝ち上がってきました。その中心が……」

モニターに、紅緒の投球映像が映し出される。
100人を超える部員、それも前列のメンバー入り部員の目つきが変わる。獲物を見る目。鋭い眼光だ。

「昨年も投げてました、品田紅緒です。ここまで32回で失点は1。奪三振は52。具体的なピッチング内容としては……」
「速い球でゴリ押しだろ?分かってるって。」

三番打者の榊原が呆れたように言うと、部員に笑いが起きた。控え部員は、まぁまぁ、と苦笑いした。

「そうだ。そうなんだけどさ。変化球も増えてるんだぜ?球種としてはスローカーブが増えた。140キロ台のストレート、スライダー、スローカーブ。カウント球に変化球を使う割合が30%前後まで上がって、特にスローカーブが多い。」

紅緒の変化球の映像が映し出される。
部員達は、その映像を食い入るように見つめた。

「特に昨日の準々決勝では、8回以降スローカーブが四割、スライダーが三割、七割変化球って配球も見せてきてる。ストレートだけって印象は捨てた方が良いかもな。」
「コホン」

ここで、食堂の隅に座った痩せ型の老人が大きく咳払いをした。帝東高校野球部監督を務める、前島四夫。何度も甲子園を経験している、実績のある監督だ。

「ねぇねぇ、生田。どうしてそこまで極端に品田の配球が変わったか、その理由で考えられる所
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ