第二十九話 打倒サザンクロス
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……」
権城は、自分の中の熱い気持ちがどんどん萎えていくのを感じた。女の泣き落としに負けてしまうというのは何とも不本意だが、しかし、萎えた気持ちはどうする事もできない。泣いてOKだと思うなよと思う反面で、権城の腹は決まった。
「分かったよ。黙っといてやるよ。……準決まで来たこの夏を棒に振るかもしんねぇけど、準決まではまた来年でも来れらぁな。勝つより大事な事があるのは、俺も知ってるよ」
権城は吐き捨てるように言って、部屋を出て行った。権城は部屋の前で、やれやれ、とため息をついた。
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「じゃ、準決勝に向けて、ミーティングを始める。お願いします。」
「「「しゃあす!!」」」
大友が挨拶すると、帝東の野球部寮の食堂に野太い声が響く。
女子の出場が認められるようになってかなり長いが、帝東の部員は殆どが男。これは伝統だろう。むしろ南十字学園みたく女ばかりなのがおかしいし、その女がどれもこれも実力者ばかりなのがさらにおかしいのだ。
「次の相手は、予想通りサザンクロスです。昨年にも対戦してますが、昨年からメンバーはあまり変わってません。」
ベンチ外の偵察部隊が、データを基にした分析を全員に伝え始める。
「初戦こそ20-0でしたが、それ以降は2-1、3-0、そして昨日の準々決勝では2-0と、僅差をモノにして勝ち上がってきました。その中心が……」
モニターに、紅緒の投球映像が映し出される。
100人を超える部員、それも前列のメンバー入り部員の目つきが変わる。獲物を見る目。鋭い眼光だ。
「昨年も投げてました、品田紅緒です。ここまで32回で失点は1。奪三振は52。具体的なピッチング内容としては……」
「速い球でゴリ押しだろ?分かってるって。」
三番打者の榊原が呆れたように言うと、部員に笑いが起きた。控え部員は、まぁまぁ、と苦笑いした。
「そうだ。そうなんだけどさ。変化球も増えてるんだぜ?球種としてはスローカーブが増えた。140キロ台のストレート、スライダー、スローカーブ。カウント球に変化球を使う割合が30%前後まで上がって、特にスローカーブが多い。」
紅緒の変化球の映像が映し出される。
部員達は、その映像を食い入るように見つめた。
「特に昨日の準々決勝では、8回以降スローカーブが四割、スライダーが三割、七割変化球って配球も見せてきてる。ストレートだけって印象は捨てた方が良いかもな。」
「コホン」
ここで、食堂の隅に座った痩せ型の老人が大きく咳払いをした。帝東高校野球部監督を務める、前島四夫。何度も甲子園を経験している、実績のある監督だ。
「ねぇねぇ、生田。どうしてそこまで極端に品田の配球が変わったか、その理由で考えられる所
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