白い光の中で
ターン11 壊れた鉄砲水
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。忘れようもないその顔は僕らの元教師にしてセブンスターズ最後の刺客、大徳寺先生こと錬金術師アムナエルだ。
「えっと、何やってんですか先生。去年成仏してませんでしたっけ」
「うん、私もそのつもりだったんだけどニャ。まあいろいろあって、今はこうしてファラオと一緒にいるのニャ」
そう言って咳払いをし、まあそんなことより、と露骨に話題を変えてくる。………今の反応を見るに今まで出てこなかったのは多分あれなんだろう、いきなり出てきてびっくりさせるタイミングをうかがってたとかそういうしょうもない理由なんだろう。とはいえ、今は深く追求する元気もないので気が付かなかったふりをする。
「今日ここまで来てもらったのは、君のことが心配だからなのニャ」
「僕が?」
「うん。ファラオと一緒に私もあの場所にいたんだけど、はっきり言ってだいぶこっぴどくやられてたからニャー。これでも去年までは教師だった身、元生徒のことはやっぱり気になるもんだニャ」
ああ、やっぱりこの人はいい人なんだなあ、と思う。つくづく、いい先生だ。だからこそ、その心配に素直に答えられない自分が情けない。
「………カウンセリングならいりませんよ、よけい惨めになるだけなんで。用がそれだけなら、もう帰りますね」
「あ、待つのにゃ!」
もうだいぶ落ち着いたと自分では思っていたけど、今の僕はまだこの好意を素直に受け取ることができないみたいだ。本当は嬉しいはずなのに、乾ききった眼からは何も出てこないし口を開けば嫌味が飛び出す。なんとかしたいのに、まだまだガキの僕には自分を抑えることができない。
と、そこでさっきからずっと冷めた目で紅茶をすすっていた稲石さんがカップをコトリと置いた。
「なるほどねぇ。さすが錬金術師、こうなることも予想済みでここまで引っ張ってきたのね。ねえ、1つ聞いてもいいかな?」
「え?」
「君はここを出て、その後どうするつもりなんだい?十代君の話はもう自分も聞いたけど、同じく行方不明にでもなるの?」
む、それについては特に考えてなかった。だけどあえて何か言うなら、負けっぱなしというのは悔しい。多分十代だって、今頃新しい力を手に入れているだろう。特に根拠はないけど、何となくそんな気がする。というか、そうであって欲しい。
とはいえ、今この話に十代は関係ない。これは僕についての話だ。要するに一言でまとめるなら、
「強くなりたい、かな」
月並みな答えだと思う。でも、すごく正直な僕の気持ちだ。
だけどその答えを聞いた稲石さんはフン、と馬鹿にしたように軽く鼻で笑った。再びカップを手に取り、残っていた紅茶を一気に飲みきってから再び口を開く。
「まあ自分だってあんまり厳しいことは言いたくないんだけどさ。無理だね」
「えっ………」
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