白い光の中で
ターン11 壊れた鉄砲水
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何?」
道の端によって通ろうとするも、またしてもそれを妨害しにくるファラオ。反対側に移動すると、今度はそっちに回り込んでくる。ぐるぐるとその場を回ること数秒、ようやくどこか来てほしいところがあるのだと察しがついた。自分のことにいっぱいいっぱいで、そんな簡単なことに気づくのにすら時間がかかったのだ。
「わかったわかった。……ハア」
今日何度目かもわからないため息をつき、のそのそと歩くファラオの後ろを大人しくついていく。その後レッド寮へ続く道からは大きく外れ、森の中を歩くこと10分。最終的にたどり着いたのは、僕もよーく知ってる場所だった。別に何かとんでもないものを期待したわけではないけど、ちょっと拍子抜け。
「ああ、よく来たね。さ、上がって上がって」
そんな家主の声がして、ギギギと音を立てて錆びついた門がひとりでに開く。ここは廃寮、元特待寮の現幽霊屋敷だ。そして2階の窓から手を振っているのがここの主である稲石さん。そう言えば、前にここに来たのはもうテスト前だから、だいたい2週間ぐらいかな。たったそれだけの間にいろんなことが………と、これまであったことを思い返すと嫌な記憶を思い出しそうになって慌てて頭を振って余計な思考を追い払う。すぐ後ろのファラオを見ると、さっさと入れ、と言わんばかりの態度。ふむ、そこまで言うならお邪魔してみようかな。
「なるほどねえ、今そんなことになってたんだ」
誰かいるのを悟られないようにとわざと荒れ放題な庭や埃まるけの玄関と違い、きれいに整頓されてキャンドルの明かりがともる稲石さんの自室。入れてもらった紅茶をすすりながら、聞かれるままにここ最近の出来事を話していた。なにしろ、地縛霊の稲石さんはこの敷地から外に出ることができない。誰も訪ねてこないこの場所も相まって、本校で何が起きているのかはまるでわかっていないのだ。
「それで、わざわざ自分のところまで?」
「あーいや、そういうわけじゃなくてファラオに連れてこられて」
「ファラオが?あーなるほど、自分に手を貸せと。ねえセンセ、自分で言ったらどうなのさ」
紅茶に砂糖を入れながら、じとーっとした目でファラオを見る稲石さん。すると見つめられたファラオの口から、黄色いピンポン玉サイズの光の球がポワンと吐きだされた。そのまま光の球は僕らの方へふわふわ飛んできて、そこを中心として半透明の人間の姿が浮かび上がる。もう今更幽霊ぐらいじゃ驚かないぞ、と思いながら見ていたのだが浮かび上がってきたその顔を見た時、思わずカップを取り落としそうになった。
「ちょっとファラオ、なんで出しちゃうのかニャ!………あ、えーと、お久しぶりなんだにゃ、清明君」
「だ、大徳寺先生!?」
ちょっとくたびれたスーツを着た、長身でメガネの男
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