白い光の中で
ターン11 壊れた鉄砲水
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いつの間にかこやつも勝手に出てこれるようになっていたらしい。今初めて知った。
………ああ、まったく情けない。無様以外の何物でもない。自分の大事なカードのことすら把握し切れてなかっただなんて。
そうやって自己嫌悪を強めていると、黙ったままの霧の王が僕の背にポン、と慰めるように手を乗せる。反射的に払いのけた。少し悲しそうなそぶりを見せた後、すうっと霧の王の姿が消えていく。やっちゃったな、と心のどこかでぼんやり思った。
これというのも、僕が勝てないから悪いんだ。心のどこかで、ぼそりとそんな声がした。そうかもしれないな、とぼんやり思う。なら、どうすればいいんだろうか。その声に問いかけると、さっきよりもはっきりした声音で答えが返ってくる。簡単だ。勝てばいい。どんな相手にも勝てるようになれば、こんなことで迷わなくてもよくなるんだ。
…………気づいたら、いつのまにか体育座りのまま寝ていたらしい。ついさっきまで頭の上にあった太陽が、今では海の向こうに沈みかかっている。そのまま特に一言もしゃべることなく、ただただ時間だけが過ぎていく。ひたすら日が沈んでいくのを眺めながら波の音を聞いていると、少しずつ荒んだ気持ちが落ち着いてくるのが分かった。気分はいまだに最悪のままだけど、少なくとももう誰彼構わず当たり散らすようなことはないだろう。時間がたって落ち着いたのももちろんあるけれど、なによりもこれからは勝つことだけを考えていけばいいというはっきりした目標ができたのが大きい。完全に日が沈みきって辺りが暗くなるまででもう少し待ってから、思い切って立ち上がる。
ゆっくりと歩いていると、すぐ横の草むらで何やら音がした。位置から言って、まず人間ではない。別に珍しくもない狸か何かだろうと思って特に気に留めないでいると、もう一度何かが動くガサゴソという音。しかもちょっと近づいてきてる。この島の動物は基本的に野生のままなのでわざわざこんな人の多いところまで来る方が珍しいのだが、もしかしたら道に迷ったのかもしれない。さすがに見捨てる気分にもなれず、刺激しないようにそっと音のした方へと近づいていくと、そこから飛び出してきた茶色い影は。
「あれ、ファラオじゃないの」
僕の足元をのそのそと歩くのは、最近どこかに出歩いてばっかりでめったに帰ってこなくなったオシリスレッドの正式寮長の猫であるファラオ。ちゃんとご飯食べれてるのかちょっと不安だったけど、相変わらず丸々としてるところを見ると何不自由なく暮らしているらしい。
「じゃあ、ファラオもたまには家に帰ってくるんだよ。ってあれ、どしたの一体」
ちょっと気が抜けて、そのまま通り抜けようとするが、その瞬間にファラオが僕の目の前に回り込んできた。
「んー?よくわかんないけど、もう帰るから………って、
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