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真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾
群雄割拠の章
第1話 「貴女はどなたです?」
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すら開けなくなる。

「桃……桃香様、覚えていますか……? 桃の味を……あの、桃の、花を……」

 ぽたっ……と音がする。
 桃香様の口から、こぼれたのだろうか。
 口元を布で拭く。

 またぽたっ……と音がする。
 あれ……おかしいな……口元は今拭いているのに。

「桃の……桃園、の……覚えて、います……か……」

 ああ……なんだ。
 桃香様の口元は綺麗じゃないか。

 こぼれているのは……私の……

「あの……誓い……を……」

 流れる涙が止められず……私はただ、桃香様を抱きしめる。
 それでも桃香様は……何も言わず、瞳に光は戻らない。

 いつの間にか……陽は落ちていた。




  ―― 公孫賛 side 平原 ――




 ……もう、寝ていいかな?
 いいよね……もう疲れたよ……

 ああ……目を閉じれば、そこは桃源郷。
 目の前には白馬が踊り、私を誘っている。
 このままどこまでも馬に乗って駆けていこう。

 さあ……

「伯珪様。新しい竹簡になります……伯珪様? 伯珪様!」
「……うがー! 私を寝させろおおおおおおおおお!」

 思わず叫ぶ。
 叫んだ拍子に、椅子が後ろに倒れた。
 私も一緒に倒れる……痛い。

「ああああああああああああああああああああああ……」
「だ、大丈夫ですか……?」

 大丈夫じゃない!
 もう寝たい!
 いっそ気絶できればよかった!

「ううううううう……なんでこんな目に」
「そりゃ、伯珪様が大声出してひっくり返ったから……」
「そうじゃない! なんでこんなに忙しいんだ!」

 目の前に山になっている竹簡の束。
 処理しても処理しても、追いつかない数で次々持ち込まれるのだ。
 いい加減、私の我慢も限界だ!

「そりゃあ、平原が荒れ果てているからです。ここから復興するのは、かなり大変ですよ」
「ううう……せめて、せめてもう一人私がいれば……」
「あれ? 伯珪様にはご姉弟はいらっしゃらないので?」
「……従姉妹はいる。いるけど……私の母は身分が低くてね。あんまり仲が良くないんだ……」
「そ、そうですか……」

 思わず明後日の方向を向く文官。
 身分の低い母の子が、異例の大出世……そりゃ、本家筋の人間は面白くないさ。
 だから従姉妹たちに手を貸してくれなんて言えない。
 言えば、領地を乗っ取られるか……寝首をかかれる可能性も高い。

「はあ……どうせ私は普通さ。ただの凡人なんだ……今の身分だって分不相応なんだ……」
「そ、そんなことありませんて、伯珪様! 献帝陛下から奮武将軍の上、薊侯に封ぜられているんですよ? そんな方が凡人などと……」
「……私は何もしてないん
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