群雄割拠の章
第1話 「貴女はどなたです?」
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「景升、様……」
「……盾二がいなくなったと知った時、儂は体から力が抜けることを感じたわい。儂はまた……後継者を選びそこねたのう」
「………………」
「……すまぬな。明日にも儂は荊州へ……襄陽に戻る。いろいろと……疲れた」
そう言って、劉表様は寂しげな背中で王座の間から出て行きました。
私は……その姿を見送って、深い溜息とともに椅子に体を預けました。
「……なんで」
思わず呟いて出る言葉。
何故、こうなったのか。
私にも、わかりません。
今の一刀様を劉表様と会わせれば……こうなることなどわかっていたはずなのに。
一刀様には何も伝えていない……一刀様自身も、周りの状況の変化に気づいていない。
けど、それを理由に一刀様を責めることは……酷だと思う。
あの人は……盾二様ではないのだから。
「私は……なんて愚かな……」
三州同盟は、盾二様がこの梁州に残されたモノなのに。
それを私は、自ら壊そうとしている。
何故……何故、そんな馬鹿な真似を……
「……私は馬鹿です……愚か者です……盾二様……叱って下さい……どこに、どこにいるんですか……じゅんじ、さま……」
気がつけば、私は一人残された王座の間で涙をこぼしていました……
―― 関羽 side ――
赤々とした夕日が、窓から見える。
時刻はすでに夕刻。
私は扉を開き、部屋へと入った。
「……桃香様。お食事ですよ」
「………………」
返事は……ない。
「……今日はビワをすりつぶしたものです。甘くて美味しいですよ」
「………………」
無言のまま、寝台に横たわっている桃香様の傍に寄る。
その背中にゆっくりと手を差し入れ、辛くないようにゆっくりと上半身を起こした。
「さ……ゆっくり口に含んでください。咽ないように……」
うつろに、虚空を見続ける瞳。
その頬は、以前の面影もなく痩け始めている。
「今日のビワは鈴々が取ってきました。季節としてはもう終わりですが、その分味が熟されて甘みが増していますね」
なにより、その桃色の美しい髪は、誰もが驚くほどに白く透けるようになっている。
この方の髪が、一月前まで鮮やかな桃色だったなど、誰が信じるだろうか。
「かなり深い森の奥まで探しに行ったようです。ですが、その甲斐はありました。桃の群生地を見つけたようですよ。一緒に桃も持ち帰ったので、明日にはお出ししますね」
この一月、まともな食事は取れていない。
自ら咀嚼しないため、口の中に入れ、こちらが手で顎を動かせる。
流動物……すりおろした果物や粥などしか口にできないのだ。
一度咽てしまえば、口
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